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2004年04月15日(木) 00時00分

敷金トラブルに反響 東京新聞

 賃貸住宅を退去する時の敷金返還トラブルについて三月二十五日の生活面で報道したところ、多くの読者から体験が寄せられた。「借り主に一方的に不利な特約事項の削除を業者に申し入れた」という静岡県浜松市の会社員のケースを手がかりに、「リフォーム特約」の問題をあらためて検証した。 (坂口 千夏)

 「特約は、自然損耗分の原状回復も借り主が負担するという内容となっており、国土交通省のガイドラインや消費者契約法に照らしても納得できない。削除してほしい」。浜松市の男性会社員(30)は先月下旬、こんな要求を貸主側に突きつけた。

 契約書には、畳の取り換えや障子、ふすまの張り替え、室内クリーニングなどの費用は借り主負担。壁のクロスやクッションフロアも借り主の負担で清掃、張り替えるという特約があった。

 国交省の「原状回復ガイドライン」は、通常の使用による損耗なら、借り主には原状回復の義務はなく、修繕は家主が家賃でカバーすべきだとしている。通常損耗の修繕費用も借り主負担とする特約を設けることは可能だが、特約が有効とされるには、十分な説明を受けて借り主が了解しているなどの条件を満たす必要があるとした。

 また、借り主に一方的に不利な特約は消費者契約法に違反する−との考え方もある。男性は、こうした点を主張し「特約は、通常の使用による損耗は貸主負担という一般的な考え方とかけ離れている」と主張し、特約の削除を求めた。

   ■   ■

 これに対し貸主側は「浜松では借り主負担という契約がほとんど。経年変化(通常損耗)という考え方はあいまいでトラブルになるので、特約を設けた」と説明。削除はできないが、「壁のクロスとクッションフロアの経年変化に伴う損耗は除く」という一文の追加はできるとした。

 男性はこのマンションが気に入っており、契約したかった。そこで、壁やクッションフロアの通常損耗を除くと、退去時の原状回復費用がどのくらいになるかの見積もりを要求。回答額が「負担できる範囲」と判断し、壁やフロアの通常損耗を除くとの一文を入れた契約書に判を押した。

 交渉で一定の成果はあったが、男性は「ガイドラインがあるにもかかわらず、貸主側が借り主に不利な特約を迫っているのが実態。こちらがおかしいと主張しているのに、旧来の契約形態をふりかざすのは問題だ」と憤りを隠さない。

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 京都地裁は先月、自然損耗分にも修繕義務を課す特約を、消費者側の利益を一方的に害する条項を禁じた消費者契約法を適用して無効とする初の判断を下した。

 しかし、管理会社八百二十社が加盟する日本賃貸住宅管理協会(本部東京)理事の関輝夫さんは「特約を無効としたこれまでの判例も、家主側の説明不足を問題にした。京都地裁の判決も基本的には同じ。『借り主に不利な特約は負担しなくていい』という思いこみは危険です」と話す。

 同協会は、トラブル防止のための主な手だてとして▽契約条件をよく読み納得いくまで業者に説明を求める▽入居時に、国交省のガイドラインに載っている「物件状況確認リスト」などを基に部屋の状況をチェックし、写真も撮影しておく−ことをアドバイスする。

 十分な説明を受けた上で契約すれば、特約は有効だ。ただ、借り主は弱い立場。説明を受け、不利と知りつつ契約することもある。不利な特約があったら、一人ひとりが浜松の男性のように声を上げ、是正を求めていく必要があるだろう。

■東京都紛争防止条例を制定

 東京都は、敷金トラブルを防ぐため、住宅賃貸借の紛争防止条例を全国で初めて制定。10月から施行する。

 条例は、業者は契約時に、借り手に対し▽退去時の通常損耗の復旧は、国交省ガイドラインに沿って貸主が行うことが基本であること▽入居期間中の必要な修繕は、貸主が行うことが基本であること▽契約で、退去時における住宅の損耗等の復旧、入居中の修繕に関して借り主の負担としている事項(特約)▽修繕や維持管理に関する連絡先−を正確に説明しなければならないと規定し、悪質な違反があれば業者名を公表するとした。特約の規制には踏み込めず「業者に説明責任を設けた。借り手側も契約書をよく確かめ、納得できなければ契約しない姿勢をもってほしい」(都不動産業課)という。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040415/ftu_____kur_____001.shtml