悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2004年03月30日(火) 00時00分

森ビルなどを強制捜査…過失の競合「立件」めざす意図的に“死角”広げZAKZAK


事故の起きた自動回転ドアを調べる捜査員。このドアの販売元が出荷した自動回転ドアは、横浜ランドマークタワーや丸の内ビルディングでも事故を起こしていたことが分かった 東京・六本木ヒルズで、6歳男児が自動回転ドアに頭を挟まれて死亡した事故で、警視庁捜査一課と麻布署は30日午前、業務上過失致死容疑で、運営管理する森ビル(港区)や販売元の三和タジマ(豊島区)など7カ所の家宅捜索を行い、強制捜査に着手した。誤作動防止で天井からの赤外線センサーの不感域(死角)が故意に広げられ、ドアに安全装置がないなど「過失の競合」が原因で、「人災」が濃厚となった。捜査一課では今後、刑事責任を立件するが、三和タジマから購入した回転ドアは六本木ヒルズ以外でも同種の事故が起きていた。

 【異例のスピード】

 業務上過失致死容疑の事故で、捜査当局が発生から5日目で強制捜査に乗り出すのは極めて異例の早さだ。

 家宅捜索は、森ビルと三和タジマのほか、自動回転ドアを製造した田島順三製作所(豊島区)、森タワー(港区)、三和シヤッター工業(新宿区)など。森ビル側と三和側の主張が食い違うことから、捜査1課は早期に証拠保全を図ることが重要と判断したとみられる。

 【なんとかならないか】

 田島順三製作所、三和タジマ両社の親会社の三和シヤッター工業によると、昨年12月7日、今回と同じドアに女児が挟まれる事故が発生している。

 森ビルは事故防止のため、ドア付近にハードル型のさくを設置した。ベルトにセンサーが反応し、誤作動が多発した。

 同月下旬、森ビルから管理を委託された「丸誠」(東京都新宿区)が三和側に「なんとかならないか」と解決策を持ち掛けたという。

 三和側は「センサーの不感域範囲をあげれば誤作動はなくなる」と説明。森ビル側の了承のもと、天井から下に向けられた赤外線センサーが感知できない範囲の設定を地上80センチから120センチに変更した。

 地上15センチにも赤外線センサーが設置されているが、ドア上のビデオテープの解析などから、母親の手から離れた身長117センチの男児が前かがみでドアに入ったたため、感知できなかった。

 意図的に死角を広げ、事故を誘発したことになるが、森ビルは「丸誠が三和側に相談した経緯には一切、関知していない」と話している。

 【安全機能なし】

 事故があった自動回転ドアには人が衝突したり挟まれたりした際に、衝撃を和らげる安全機能がついていなかった。

 三和タジマでは、当該のドアを含めて5種類扱っている。他の4種類は人が挟まれたりぶつかると、反対側に折れ曲がったり、後方に動く安全機能を備えている。

 当該のドアは中央に柱がなく、天井と扉が固定された状態でレールの上を回転するタイプ。このため、挟まれた人を救出するにはレール上を逆回転させるしかない。

 このタイプは出入り口を広く取れるメリットがある一方、安全機能がまったくないという決定的なデメリットがある。

 ドアに挟まれた涼君は瞬間的に約800キロの圧力を頭に受けたとみられ、母親や周囲の通行人が力を合わせ、総重量2.7トンのドアを逆回転させ、やっと救出された。

 【大人用だった】

 「子供が急に進入した場合の安全設計は想定していなかった」

 三和側は、回転ドアは「大人用」に設計されたものであったことを認めている。

 当該のドアについて、三和側では通常1分間に2.8回転するように設置者側に要請していたが、六本木ヒルズ森タワーの場合、「ビジネス棟で出入りが多い」との理由から、最速の3.2回転に設定していた。

 東京の新名所の六本木ヒルズには、多数の子供たちが訪れていた。今回の事故前に起きた32件の回転ドア事故のうち、半数の16件は子供が犠牲になっていた。

 【他でも同種事故】

 三和タジマが販売した自動回転ドアについては、横浜市の「みなとみらい21地区」にある横浜ランドマークタワーや、JR東京駅前の丸の内ビルディングでも同種の事故が再三起きていた。

 ランドマークでは昨年3月、東京都町田市に住む小1男児=当時(7)=がランドマークプラザ1階の回転ドアに足を挟まれ、足を骨折する重傷を負っている。

 平成5年の開業以来、この事故を含め計9件の回転ドアによる事故が起きているという。ドアはいずれも三和タジマから購入したものだった。

 同ビル管理会社の親会社の三菱地所では27日午後から、すべての回転ドアを閉鎖する緊急措置をとっている。

 14年9月オープンの丸ビルでも、昨年7月と11月、女児が足を挟まれたり、ドア内で転倒してけがをする事故が起きていた。やはり、三和タジマから購入していた。

 事故は三和タジマが販売した自動回転ドアだけではなく、全国で起きているとみられ、ドア自体に構造的な欠陥がある疑いも浮上している。

 【3カ月以内にガイドライン】

 国土交通省と経済産業省はやっと重い腰を上げ、昨29日、専門家らの検討会を設置、再発防止のため初のガイドライン作りに乗り出すことを決めた。

 検討会は国交省と、メーカーを管轄する経産省のほか、建築関係の有識者や自動回転扉のメーカー、ビル管理会社の担当者らで構成する。

 自動回転ドアは、近年導入が進んだ新しい設備。死亡事故の報告もなかったことから、建築基準法や日本工業規格(JIS)に安全基準は設けられていなかった。

 両省とも、全国の回転扉数や事故もつかんでいないのが実態である。

 国交省の風岡典之事務次官は「4月の早い時期に第1回の会合を開き、3カ月以内に事故防止ガイドラインについて何らかの報告をとりまとめたい」と話した。

 涼君の事故は、「フェイルセーフ」という二重三重の安全確保に欠けた企業の営利優先と、ハイテク化に対応した安全基準を作らず、業者任せで放置した「行政の不作為」も浮き彫りにした。

ZAKZAK 2004/03/30

http://www.zakzak.co.jp/top/t-2004_03/1t2004033020.html