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2004年03月30日(火) 00時00分

回転扉事故 欠けていた安全意識 東京新聞

 痛ましい事故だったでは済まされない。回転扉に六歳男児が頭を挟まれて死亡した東京・六本木のビルでは過去にも負傷事故があったのに、弱者に配慮した安全対策を怠っていた。その責任は重い。

 東京の新名所、「六本木ヒルズ」森タワーへ遊びに来た男児は、母親の目の前で自動回転扉に頭を挟まれてしまった。

 扉には異物を挟んだりしたときに安全のため逆回転し衝撃を弱める安全機能が付いていなかった。無残にも八百キロ近い扉の圧力が直接加わり、即死に至ったのである。

 しかも、扉の事故防止用の赤外線センサーは感知範囲が以前より狭められていた。背の低い幼児がすり抜けた場合、死角となって安全チェックが働かなかったのである。

 これは昨年十二月に女児が回転扉に頭を挟まれて負傷した事故の後、誤作動を防ぐため、センサーの感知範囲を狭めたという。

 また、ビルの出入り量を増やすため、同型の回転扉と比べて回転速度を速く設定してあった。このため、男児の頭により強い衝撃が加わったとみられる。

 ビル、メーカー双方で十分な安全対策を取るべきなのに、肝心のセンサーの役割を制限したとは言語道断だ。安全より効率という姿勢からは、安全意識の欠如が問われる。

 メーカー側は「子供なら下部に設置したセンサーで感知できると思っていた」と釈明するが、子供がとっさに飛び込んだら事故は防げない。原因を徹底究明する必要がある。

 六本木ヒルズでは昨年四月の開業以来、回転扉による事故が三十二件あり、その半数は子供の事故で、負傷者も出ていた。過去の事故の教訓が生かされていなかったのは心外というほかない。

 都心の再開発地区に鳴り物入りでオープンした複合施設の目玉となる高層ビルだが、抜本的対策を怠っていた責任は重い。

 管理者の森ビルは市街地づくりに率先して取り組んでいる。機能面や景観を重視するが、利用者の安全がおろそかにされていないか。特に、子供やお年寄りへの安全配慮を欠いた建築設備は、徹底的に見直す必要がある。

 回転扉を取り付けたビルは十数年前から全国で普及し始めた。出入りの際に外気が入らず、ビル内の空調効率がいいなどの利点からだ。しかし、子供やお年寄りが扉に挟まれたり、転んだりした事故も起きている。この際、回転扉の安全点検を実施するよう求めたい。男児の死を無駄にしてはならない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040330/col_____sha_____002.shtml