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2004年03月29日(月) 13時22分

社説2 「人工都市の死角」なくせ日経新聞

 ホテルやオフィスの回転扉の前で足のすくむ思いをした人も少なくなかろう。回転する扉の間にいつ体を滑り込ませるか、タイミングのとり方が意外と難しい。後頭部をガラスにぶつけたり、つまずきそうになったりしてひやりとすることもある。

 東京・六本木の「六本木ヒルズ」で26日、閉じかけた自動回転扉に6歳の男児が駆け込み、扉に頭を挟まれ死亡するという痛ましい事故が起きた。男児は、4月に小学校へ入学する予定であったという。

 警視庁が業務上過失致死容疑で捜査に乗り出し、国土交通省も東京都などを通じ調査を始めた。詳しい事実関係は、これらの捜査・調査で明らかになろう。だが、華やかな再開発ビルの安全面に大きな死角があったことだけは間違いなさそうだ。

 まずこの自動回転扉の安全装置が十分であったか、という点である。2.7トンもの重量物が毎秒80センチの速度で回転している。このため扉に挟まれると、約800キログラムの力が加わるという。手動回転扉ならすぐ停止するのに、この回転扉ではセンサーが異常を感知してから完全に止まるまで25センチも動く。万力のように挟んだ人間を締め付けるわけだ。

 安全装置の柱ともいえるセンサーの感知範囲が狭く設定されていた疑いも持たれている。センサーをあまり敏感に設定すると、誤作動が多くなるからである、という。

 昨年4月にオープンした六本木ヒルズには半年間で約2600万人が訪れた。都市の装いを大きく変えつつある東京を代表する新名所となっている。便利さと快適さと斬新さを売り物にしたこの人工都市で、1年間に回転扉に絡んだ事故が32件も起き、10件の事故でけが人が救急搬送された。なぜ重大事故が起きるまで放置してきたのであろうか。

 子供や老人、障害者などにとって、最新鋭の再開発ビルは必ずしも安全なところとはいえない。事故を教訓に多くの再開発ビルで安全の再点検を進めてほしい。回転扉を設計製作した企業も安全への配慮が十分だったか見直す必要がある。

 国交省は検討会を設置し回転扉の安全ガイドラインを作るという。回転扉といってもいまや巨大な構築物である。安全基準が欠かせない。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20040329MS3M2902729032004.html