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2004年03月25日(木) 00時00分

敷金 トラブル防ごう 国交省の改訂版ガイドライン 東京新聞

 賃貸住宅を退去するときの敷金返還に絡むトラブルを防ごうと国土交通省が設けている「ガイドライン」が今年二月、六年ぶりに改訂された。こうしたトラブルの解決に使われることが多い簡易裁判所の少額訴訟制度も、来月から対象となる請求金額が三十万円から六十万円に引き上げられ、利用しやすくなる。改訂版ガイドラインを通じて、トラブル解決のポイントを探った。 (間野 丈夫)

 「全部のリフォームに四十万円かかると言われました。敷金が十八万円あるので、残り二十二万円を払えというのです。業者は、入居当時の契約に基づいているの一点張りです」

 昨年暮れ、賃貸住宅から引っ越したという女性(39)は、業者からの要求が納得できない。九年前の入居時の契約には、通常の使用によって汚れた部分も含め、借り主が全部直して出ていく−という項目があった。だが、全体をリフォームし、これほどの金額を請求されることになるとは思いもしなかった。

■「特約」借り主の了解が必要

 この女性のように、契約書で、借り主に一般的な義務を超えた修繕をさせる「特約」があり、これを理由に多額のリフォーム費用を請求されてトラブルになるケースは多い。だが、特約が有効とされるには三つの基準があり、これを満たしていないと裁判で特約が否定されることもある。

 国交省のガイドラインは、借り主に特別の負担を課す特約は(1)特約の必要性があり、暴利的でないなど客観的、合理的な理由がある(2)借り主が特約によって通常の原状回復義務(別稿参照)を超えた修繕義務を負うことを認識している(3)借り主が特約による義務を負担するとの意思表示をしている−という要件を満たすべきだとした。

 その上で、こうした特約があることを借り主が十分に認識し、了解していることが必要と説明。将来、借り主の負担する費用がどのくらいになるか明示することも欠かせないとした。

 ガイドラインは敷金トラブルの判決事例も紹介している。改訂では一九九八年以降の判決十例を追加、重複例を削除し計二十一例を掲載した。

 修繕対象となった損耗が通常使用によるものかどうかが争われたケースでは、通常の使用と判断する判決が大半。通常使用を超えており借り主に修繕義務があるとされた場合でも、汚損部分の面積や、古くなったことによる価値減少を考慮し、借り主の負担が減額された判決もある。

 入居時の状態に戻す特約があっても、契約の際に趣旨を説明し、借り主が承諾したときでなければ修繕義務はないとする判決が大半で、特約そのものが認められないケースが多い。ただし、文言通りに特約の効力を認めた判決も出ている。

 改訂版ではトラブルの未然防止のため、入居時に家主が原状回復に関する契約条件を十分に説明し、借り主の理解を得る必要があることを強調。また、損耗やき損の事例も増やしている。ガイドラインの冊子は、不動産適正取引推進機構=電03(3435)8111=が販売している。

■通常使用なら『原状回復』不要

 敷金トラブルは、借り主が住宅を元の状態に戻す「原状回復」を求められることがきっかけで起こる。だが、住宅の価値は、住んでいてもいなくても時間の経過に伴って減少する。

 このため、通常の使用方法で住んでいればそうなったと思われる状態なら、住み始めた時より状態が悪くなっていても、そのまま家主に返せばよい。通常使用による損耗なら借り主に原状回復の義務はなく、修繕は家賃でカバーされるべきだとするのが、学説や裁判の判例の考え方だ。

 ガイドラインは「原状回復とは、借り主の使用により発生した建物価値の減少のうち、借り主の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・き損を復旧すること」と定義。例えば次の入居者を確保するために行う設備の交換や化粧直しなどのリフォームは、家主が負担するべきだとした。

■少額訴訟の対象拡大

 少額(三十万円以下)の金銭の支払いをめぐるトラブルについて、原則として一回の審理で判決を出すのが少額訴訟。民事訴訟法の改正で一九九八年一月から導入された。

 さらに昨年七月の同法改正で、今年四月から、対象が三十万円から六十万円に引き上げられる。「国民に非常に好評で件数も増えているので、利用できる事件の範囲を広げた」と法務省民事局の立法担当者は話す。

 全国各地の司法書士会は、少額訴訟の支援センターを設けて相談に乗っている。愛知県司法書士会広報部長の和田博恭さんは「内職商法で払ったお金の返還など、消費者トラブル全体で利用の幅が広がる」とみる。

 関西の弁護士や司法書士らでつくる「敷金問題研究会」の浦井裕樹さんも「請求額が三十万円を超えると通常訴訟しかなかったが、これからは少額訴訟も使え、選択の幅が広がる」と歓迎する。同会は、一回の審理で終わる少額訴訟では、その時に十分な証拠が用意できないと負けてしまうこともあるので、通常訴訟との「使い分け」をアドバイスしている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040325/ftu_____kur_____000.shtml