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2004年03月25日(木) 03時21分

<三菱ふそう>96年に負傷事故把握も報告せず毎日新聞

 金属部品「ハブ」が破損し三菱自動車製の大型車のタイヤ脱落事故が多発した問題で、三菱ふそうトラック・バス(東京都)は24日、国土交通省にトラックやバスなど約11万2000台についてリコール(回収・無償修理)を届け出た。記者会見した同社のビルフリート・ポート社長は新たに、96年にハブ破損で負傷事故が発生した事実を把握しながら、運輸当局に報告していなかったことを明らかにした。同社長は初めて事故の遺族や社会に向けて謝罪し、社内処分する方針を表明した。

 同社はこれまで、人身事故は02年1月の横浜での母子死傷事故のみとしていた。新たに判明した負傷事故は96年9月、静岡県内で発生。男性が大型車を運転中、ハブ破損が原因でタイヤがはずれかかり、タイヤ脇のブレーキ装置とこすれて摩擦熱で破裂。この際、男性は飛んできた車輪片が指に当たり骨折したという。警察は交通事故扱いはせず、同社は販売会社の連絡で事故を知ったが、被害男性に治療費などを支払うなどして社内で処理していた。

 同事故のハブは、6種あるうちの「D型」で、同社は事故直後「基本的な異常があるかもしれない」とみて他の型式との強度などの比較検査を行ったが、原因不明のまま「設計上の問題ではない」と結論づけていた。タイヤ脱落事故は92年から03年5月までに計57件発生しているが、うちD型に38件が集中している。02年1月にやはりD型ハブのタイヤ脱落で横浜市の死傷事故が発生しており、同社が静岡の事故などの原因究明をあいまいにしたため、死亡事故につながった疑いが強まった。

 一方、リコールは「ハブの強度不足」としており、不具合の部位は前輪のハブ。旋回ひん度の高い走行を繰り返したり、過積載を続けると亀裂が生じ、最悪の場合、ハブが破断して脱落する恐れがある。

 対象になる車は、83年7月〜03年2月に製造された458型式で、大型トラックなど約7万1300台、観光バス約1万1000台、路線バス、クレーン車など約1万9100台、除雪車など約1万300台。暫定措置として、より強度の高い種類のハブと交換するが、恒久措置として新型ハブの開発も急ぐことにしている。【武田良敬、菊池卓哉】

 ◇ミス認識は「今月」、深まる疑惑

 相次いだタイヤ脱落事故で24日、リコールを届け出た三菱ふそうトラック・バス。なぜ事故発生からリコールまで長期間かかったのか。社長らは会見で「最近認識した」と繰り返したが、設計ミスの把握をうかがわせる資料が次々に明らかになっており、疑惑は深まっている。【武田良敬、月足寛樹、安高晋】

 国土交通省で行われた会見では、続々と明らかになった設計ミスを疑わせる未提出の資料に追及が集中、同社は苦しい弁明に終始した。

 02年の横浜の母子死傷事故直後、同社が行ったハブの抽出検査で、整備不良と関係のない亀裂が見つかっている。だが、同社は会見で「ハブの寿命は亀裂でなく、破断で判断していた。当時の基本スタンスだった」との独自の理論を展開し、重要なデータを無視した疑いが浮上した。

 昨年3月には、社内の技術者がハブの強度に問題があると指摘した社内リポートをまとめた。ビルフリート・ポート社長は「個人用に作った資料で、上層部は知らなかった」と釈明。社長は「過去の経緯は調査中」と繰り返したが、検査などに「不適切な面があったと思う」とも述べた。

 同社は横浜の事故直後の02年2月から半年間、当時の開発本部長を先頭に原因の究明などを約10回にわたって協議した。しかし、その場でも「リコール」の言葉は出なかったという。

 設計ミスをいつ認識したかについて、渡辺悠(ひさし)管理本部長は「10日に至るまでリコールとは思いもしなかった」と話し、「タイヤ脱落は設計上の問題」と最近、初めて認識したことを強調。だが、事故は92年以降、57件も発生しただけに、「可能性すら認識しなかったのか」と質問が相次いだが、同社は「今月だ」と繰り返した。

 その理由として、同社は昨年1月、三菱自動車からの分社で経営陣や検査方法が変わったためと説明した。ダイムラー・クライスラー社が送り込んだポート社長は「昨年の夏に品質検査をダイムラーの方式でやり直し、リコールと判断した」。さらに「(横浜の事故直後の)三菱自での協議には、私は関わっていない」と述べ、旧経営陣に責任を押し付けるかのような発言も目立った。

 問題のハブのうち脱落事故57件中、38件が「D型」に集中していた点について、渡辺本部長は「恥ずかしながら現在までなぜ集中したのか検証出来ていない」とさえ述べた。

 同社がリコールを届けたことで、今後の焦点は捜査の行方に移る。横浜の死傷事故について業務上過失致死傷容疑で捜査している神奈川県警は既に、三菱自動車本社などを2度家宅捜索し、資料の分析と事情聴取を進めている。立件のポイントは、事故発生時までに会社が事故を予測でき、結果を回避する義務を怠っていなかったかどうかだ。県警は一線社員の聴取を進めており、歴代の経営幹部からも任意で事情を聴く模様だ。今回、同社が“非”を認めたことで、捜査の急展開も予想される。

 一方、リコール届け出遅れが道路運送車両法違反にあたるかどうかについて、国交省が告発を視野に同社への資料請求や事情聴取を進めている。90年代の設計段階から、今回のリコール届け出までに、同社が設計ミスに気づき、虚偽の報告していたのではないかを調べる。また、意図的にリコールを避けていたことが判明すれば、届け出義務違反も検討する。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040325-00000073-mai-soci