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2004年03月24日(水) 00時00分

企業の責任 市民の声をよく聞こう 東京新聞

 企業の社会的責任(CSR)という言葉が、流行語になりつつある。「環境」から「社会的責任」へ、看板を掛け替えるだけでなく、この際、日本版の規格を作り、世界に提案する気概がほしい。

 ある有名企業の役員が、CSRへの対応を話し合うシンポジウムの席上で、「この国では、一夜明けたら景色がすっかり変わってしまう」とつぶやいた。

 国際企業社会はまさに、環境からCSRの時代へと移り変わりつつあるようだ。その中で、ついこの間「バスに乗り遅れるな」と一気に過熱して、やがて形骸(けいがい)化し始めた環境の国際標準化機構(ISO)ブームの再現を戒める言葉のようにも受け取れた。

 欧米がCSRを重視し始めた背景には、ビジネスの国際化が進むとともに膨らんだ、消費者や非政府組織(NGO)などから挙がる多種多様な不満と期待がある。

 市民社会が成熟に向かうにつれて、生活者、消費者が企業に対する利害関係者(ステークホルダー)としての自覚に目覚め、環境、安全、衛生面への関心が高まった。

 こうした市民社会の成熟は、投資家が、従来の市場評価の枠組みを超えて、環境や倫理面への評価を基準に投資先を選ぶ「社会的責任投資(SRI)」の台頭にも表れた。

 社会の“進化”を追い風に、生活者は経済、環境、社会性の「三つの基準(トリプルボトムライン)」に照らして企業の価値を判断し、企業側は利害関係者との対話を深めつつ、ともに「善い企業」を育てていこうという積極的な考え方が、CSRの基本である。

 内外で続発した不祥事を受けて、企業イメージの向上を図るという消極的な姿勢に立つものではない。

 欧州連合(EU)による枠組みづくりやISOによる規格化が進む中、日本企業の出遅れを指摘する声も高まっている。

 規格化に乗り遅れ、国際的な供給網から外されては大変と、慌てる向きもあるやに聞く。しかし、規格化を進めることが本来の意義ではないはずだ。

 企業が備えるべき社会性には、法令順守や労働環境、人権などさまざまな要素があり、国や地域によっても異なる。CSRに取り組む企業にまず必要なのは、国際規格があってもなくても、利害関係者の声をそれぞれによく聞いて、個々の企業にいま、何が求められているのかを把握し、理解することだ。

 後は、その声にただ誠実であればいい。消費者や社会の信頼と支持は深まり、商機も広がるはずである。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040324/col_____sha_____003.shtml