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2004年03月09日(火) 00時00分

鳥インフルエンザ ここは冷静な対応を 東京新聞

 京都府の養鶏場から全国に飛び火した鳥インフルエンザ禍は、養鶏場経営者の自殺という悲劇にまで発展した。いま求められているのは、混乱と再発の防止のために、冷静に対処することである。

 通報の遅れがもとで、京都府丹波町の浅田農産船井農場に端を発した騒ぎの影響は、これまでに全国二十数府県に及んでいる。責任を感じた浅田農産会長の自殺は痛ましいが、通報の遅れが故意だったのかどうかの全容解明は、厳格に行われなければならない。

 騒ぎが全国に広がるにつれ心配されるのは、過剰な反応だ。国民が何に不安を抱いているかについて農水省はもっと耳を傾けてもらいたい。

 例えば、ベトナムなどでの人への感染は、鳥類を生きたまま売買したり、鳥類と密接な接触のある生活をしていることが原因と考えられ、そうした習慣のない日本では起きにくい。この点を農水省は、繰り返し国民に広報するのが望ましい。

 農水省は「鶏卵や鶏肉を食べて感染した例はない」と説明する一方、発生地域で生産された鶏肉や鶏卵の回収を求めるなど一見矛盾した政策をとっており、国民には分かりにくい。回収は「念のための措置」であることを強調すべきである。

 国民の間では「鶏卵に触れれば感染するのでは」との不安もあり、大量投棄も起きている。これについても「市場に出回っている鶏卵に触れて感染した例はない」ということを積極的に伝える必要がある。

 今回の騒ぎで、家畜伝染病予防法の見直し論議も浮上した。鶏など家畜が同法で定める病気になったり、その疑いがあるとき、都道府県への届けを義務づけているが、違反しても一年以下の懲役か五十万円以下の罰金で、重いとはいえない。通報の遅れが被害を拡大したことを振り返れば、早期通報を促すために、罰則の強化はやむを得ないだろう。

 被害を受けた農家への補償の充実も忘れてはならない。現行法で補償されるのは、家畜の処分を行う発生農家だけだ。とばっちりを受け、鶏卵などの移動を制限される他の農家は対象外である。発生の際、迅速に対応して被害拡大を防ぐには周辺農家の協力が欠かせない以上、補償の対象とし、協力を得やすくしなければならない。

 七日には、船井農場とその周辺で死んだカラスからもウイルスが検出された。船井農場での二次感染かどうか不明だが、今後、カラスがウイルスの運び役になる可能性が指摘されている。行動範囲が狭いとはいえ、不意の発生を念頭においた万全の対策が求められている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040309/col_____sha_____002.shtml