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2004年03月07日(日) 12時46分

社説 課題山積の介護保険5年目の見直し日経新聞

 2005年度の介護保険制度の見直しに向けて、厚生労働省での検討作業が進んでいる。制度発足後4年がたとうとしているが、さまざまな問題点が浮き彫りになっている。利用者が予想を上回って増えている中で保険財政を健全に維持し、しかも利用者本位のサービスを提供し続けていくにはどうすればいいのか。課題は多い。

 昨年10月末現在で介護が必要と認定された人は371万人。制度発足直後の2000年4月末時点では218万人だったので3年半で70%も増加したことになる。65歳以上人口のこの間の増加率は12%なので、いかに介護保険が急速に普及してきたかがわかる。

 それに伴い費用の方も増加の一途をたどっている。2000年度には3兆6000億円だった総費用は2003年度(見込み)には5兆4000億円と50%も増加。それをまかなうために介護保険料の引き上げも避けられなかった。65歳以上の保険料は昨年4月から月平均でそれまでの2911円から3293円と13%の引き上げとなった。


「軽度」への対応が必要

 今後とも費用の増加、それに伴う負担増は避けられないが、年金や医療と同様、安易な負担増は容認されない。サービスの質を落とさず、より効率的なものにすることで費用も抑制する、という難しいかじ取りをしていかなければならない。

 その一つの方策として「軽度の要介護者に対する給付のあり方の見直し」がある。比較的症状の軽い「要支援」「要介護1」と認定された高齢者の伸びは際立って高い。全体の伸び率が70%の中で、要支援の増加率は91%、要介護1は115%にもなっている。当然、財政にも大きな影響を与えている。

 現在はこうした軽度の症状の人たちに対しても、重度の要介護者と同様にホームヘルパーの派遣、あるいは施設での介護(要支援は除く)などを行っている。しかしそれだけではかえって症状が悪化し、要介護度も重くなっていく例も多い。本人にとっても不幸なことだし、費用の点からも好ましくない。

 軽度の人たちに対しては家事援助や身体介護といったサービスよりも、身体機能を回復するためのリハビリを中心にしたほうが効果的という指摘が多い。そうすれば症状が改善し「認定」から外れて「自立」に復帰できるという期待も出てくる。合わせて要支援や要介護1になる前からリハビリなどの介護予防を行うことも重要だろう。

 こうしたより望ましい介護のあり方を実施に移していく必要があるが、しかしそれだけで費用がすぐに節減できるとはいえないだろう。今後とも高齢者人口が確実に増え続けることを考えれば、費用の増大と負担増は避けられない。このため厚労省は保険料徴収の対象を現在の「40歳以上」から「20歳以上」に拡大することを検討している。そうすれば1人当たりの保険料を下げることができるからだ。

 ただ20歳以上から保険料を徴収するとなると、また別な問題が生じる。20歳以上の介護を必要とする人、つまり障害者も介護サービスの対象としなければならなくなる。現在の障害福祉のあり方を大きく変えることになる。サービスの水準や質が維持、あるいは向上するなら望ましい変更になるだろうが、相当に緻密(ちみつ)な検討が不可欠である。


障害者介護は緻密に

 同じ障害者といっても身体障害、知的障害、精神障害などいくつかに分けられる。複数の障害を持つ人もいる。それぞれによってサービスの内容も異なるだろうし、自立支援に重点を置くことが求められる。高齢者に対する介護と同列に論じることはできない。その具体的なノウハウの整備をしないで踏み切れば、大きな混乱を招くだろう。

 このほかにも解決しなければならない課題は多い。制度発足後4年近くたって、相変わらず在宅よりも施設入所希望が多い。全国的に入所待ちの状態が続いている。厚労省によれば「施設入所者の6割が在宅でも可能」としているが、ではなぜ住み慣れた自宅での介護を望まないのか、その原因を徹底的に分析する必要がある。

 この4年間、悪質なサービス業者の報告も多かった。サービスの質をいかに担保するのか、これも十分な対策が欠かせない。また現在の介護施設である特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設の分類が実態に合っているかどうかの検証も必要だ。例えば老人保健施設では本来の目的である家庭復帰の割合が50%を割り込んだ。いわば半分は「特養化」しているわけだ。三施設の機能の見直しとともに、ケアハウスや有料老人ホームそれにグループホームなどの施設をどう整備するかも重要な課題である。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20040307MS3M0700C07032004.html