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2004年03月04日(木) 00時00分

確かなあした 廃止される?『電話加入権料』 東京新聞

 家庭に固定電話を引く際NTTに支払う「電話加入権料」を廃止するかどうかを決める議論が、総務省で始まろうとしている。廃止となれば、新しく固定電話を引く人にとっては費用負担が大幅に低くなるメリットがある半面、これまで払った人たちにとっては「財産」が失われることを意味する。そもそもどんな性格の「権利」だったのだろうか。 (稲田 雅文)

 「七万もした『財産』が、いきなりゼロになるなんて信じられない。今まで払ってきたのは何だったのか。お金を返して、という思いです」。大学に入って下宿に電話を引く際、費用の工面に苦労したという女性会社員(30)は、電話加入権料の廃止はとても納得できないと言う。

 加入権料は正式には施設設置負担金といい、新しく固定電話を設置する際に徴収される。一度負担金を払えば、転居しても負担金なしで電話が引ける。これが「加入権」と考えられてきた。

 もともとは電話回線を早急に全国に張り巡らせる資金調達のため、一九四七年に設けられた。六〇年には一万円だったのが徐々に引き上げられ、八五年に七万二千円となり、現在に至っている。

 現在も新規架設工事に必要な費用の一部に充てるとされており、NTT西日本も「回線の敷設や維持費用として別枠で使っている」と説明する。

■意義薄れる

 電話の基本料について検討していた総務省の勉強会は昨年十二月、施設設置負担金について▽加入時の費用が高いため、新規加入や回線増設を妨げている可能性がある▽諸外国では同様の費用は月々の料金で回収されているのが一般的▽電話網が全国に整備され、意義が薄れてきている−などの理由から「廃止を含め、検討すべき時期に達している」と報告した。

 携帯電話の普及などにより、固定電話(ISDN回線を含む)の加入者数は九七年末の六千三百万回線をピークに、〇二年末は六千八十四万回線まで落ち込んでいる。さらに九七年からはISDN回線で、〇二年からは通常回線で、加入権料を払わなくても月々の基本料に六百四十円を上乗せすれば電話を引ける「ライトプラン」が登場。現在は加入者の九割がこちらを選んでいるという。

 総務省料金サービス課は「加入権料を廃止すれば新しく入る人にとっては値下げを意味する。固定電話も良いサービスなのでもっと利用を増やしたい」との考え。

 携帯電話も以前は同じ七万二千円の負担金があったが、九六年の廃止以後、飛躍的に利用が増えたことから、同じような効果を期待。同省は近く、NTT関係者や消費者団体、経済団体の代表者らでつくる公式な議論の場を設ける方針だ。

■払い戻し?

 「回線の整備が終わっているのに、負担金が残っているのが疑問。廃止するなら、集めたお金の使途を明らかにし、余った分は払い戻す必要があるのでは」と、日本消費者連盟事務局長の水原博子さんは主張する。

 しかし、約款には返還する規定はなく、NTT西日本も「これまでの設備投資に使われたので、返還する性格のお金ではない」と、加入権料が廃止されても払い戻しはできないとの考えだ。

 多くの回線を使う企業は、加入権が減価償却のできない資産として計上している。このため、廃止すると資産がそれだけなくなることになる。麻生太郎総務相も会見で「債権として流通しているものを一方的に止めるのは簡単ではない」と慎重な考えを示している。

 廃止が、すぐ固定電話の加入増につながるとは考えにくい。消費者にどんな影響があるかをよく検討した上で、廃止の是非を判断する必要があるだろう。

■すでに相場は低迷

 「加入権は国民の財産。廃止は財産が消えることを意味する。すでに買い取り相場が大きく下がり、その分財産が減っているんです」と話すのは、名古屋市東区で四十年近く加入権の売買を手がけてきた浜田文夫さん。

 昭和四十年代ごろまではまだ回線の整備が進んでおらず、当時の電電公社に依頼するよりも、業者で権利を買った方が早く電話を開設できた時代もあったという。このため、加入権は古くから財産として流通してきた。個人も業者を通じてお金に換えることが可能だ。

 五万−六万円の買い取り価格がついた時代もあったが、ライトプランの登場などで徐々に下落し、最近では一万三千−一万五千円ほど。加入権廃止の議論が出てからは、売買業者が買い取りを控えたり、値の付くうちに売却する動きが出たりして、大幅に下がっている。売却すれば得られたはずのお金がそれだけ目減りしている形だ。

 NTTがこれまで徴収した負担金の合計は四兆円を超えると言われ、加入者の負担で回線の整備が進んだことは間違いない。売買業者の団体である全日本電話取引業協会(東京都港区)事務局長の武田貢さんは「廃止する場合、これまで負担してきた人の貢献はどう考えるのか」と疑問を投げかける。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040304/ftu_____kur_____000.shtml