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2004年03月03日(水) 00時00分

紛争続発『地下室マンション』 東京新聞

 「地上三階建て」のはずが、完成したら九階建て。建築基準法の“抜け穴”を利用して、本来は低層住宅しか建てられない地域に出現する高層の「地下室マンション」が首都圏各地で問題となっている。住民が反対しても、法律を盾にする業者に対抗できなかった。だが、横浜市が先月二十五日、規制のための条例を制定。東京都世田谷区や川崎市なども検討に入った。政府も二日、建築基準法の改正案を閣議決定し、やっと見直しを始めた。 (横浜支局・金杉貴雄)

 「なんだこれは?」

 横浜市の官庁街から二キロほどの中区本牧満坂。二階建て住宅が軒を連ねる斜面地を下った「くぼ地」に、マンション建設が計画された。

 高さ制限十メートルの低層住宅地区に掲げられた看板を見て、住民は首をひねった。

 「地上三階地下六階」

 斜面地に盛り土して「地面」を造り、七階から上が「地上」、下が「地下」。実質的には九階建てだ。

 このようなことは、横浜だけではない。神奈川県川崎、横須賀、鎌倉の各市や、東京都、大阪府、兵庫県などで相次いでおり、業者と住民の対立を生んでいる。

 原因は一九九四年の建築基準法改正だ。住宅事情を改善するため、地下の容積率を緩和した。

 「一戸建て住宅を想定した改正だった」と国土交通省は言うが、容積率を上げられる抜け道に着目したのが、マンション業者だった。完全な地下では部屋は売れないが、斜面地なら片側には窓がつくれる。「地下」といっても名目上のものだ。

 「地下室マンションに反対する市民ネットワーク」が把握しているだけでも、全国で五十件余りの紛争が起きている。理事の立松幹雄さん(横浜市)は「この数倍はあるはず」という。

 立松さん自身も地上三階地下四階の地下室マンションの斜面下側に住む。「七階建てが家の上の方に立っているので、こちらに迫ってくるようなすごい圧迫感がある。景観としても異様だ」

 住民が自治体に訴えても「合法なので開発許可や建築確認を出さざるを得ない」と言われ、歯止めがなかった。

 低層住居地区でのマンション紛争がこの十年で二十六件に上る横浜市は先月、独自に地下室マンションの規制条例を制定した。低層住宅地区での制限を「地上地下合わせて五または六階まで」とし、地盤面をかさ上げする意図的な盛り土も禁止する、全国初の内容だ。

 鎌倉市も昨年、斜面地にひな壇のように連なるマンションに制限をかける条例を施行、地下室マンションに一定の枠をはめた。

 世田谷区では、多摩川に沿った美しい緑地の「国分寺崖線(がいせん)」が削られ、地下室マンションが建設されている。そこで、斜面の掘削を規制する条例を検討中。川崎、横須賀両市も、横浜市と同様の条例案について議論を進めている。住民には「やっと」の思いが強いが、こうした動きを歓迎している。

 国土交通省も、地下室建築物の地盤面の基準自体を各自治体が決められる建築基準法の改正案を二日、閣議決定し、今国会での成立を目指している。開発優先になりがちな社会状況の中、街並みと住環境を守ろうとする動きが、芽生え始めている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040303/mng_____kakushin000.shtml