悪のニュース記事

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2004年02月28日(土) 01時54分

2月28日付・編集手帳読売新聞

 シェークスピアの戯曲「ハムレット」で主人公は、世の耐えがたい事柄を挙げてみせた(第三幕)。侮辱、役人の横柄などと並んで、「法の裁きのつまらぬ遅延」とある◆初公判からやがて八年、オウム真理教の教祖、松本智津夫被告に死刑判決が下った。弁護団はときに引き延ばしとしか映らない尋問を重ね、被告は黙して語らず、「つまらぬ遅延」という言葉がこれほど似合った裁判もない◆被害者の遺族のみならず国民の多くを耐えがたい徒労感に誘うものは、むなしく流れ去った法廷内の時間だけではないだろう。法廷外——社会の時計もまた、実りある時を刻んできたとはいえない◆「アーレフ」と改称した教団に、オウムの教義は引き継がれている。警察によれば脱会した信者らは、五つの分派グループをつくって松本被告の個人崇拝をつづけているという◆宗教を隠れ蓑(みの)にしてテロを仕掛ける新手の犯罪集団が現れても、国はその団体を解散させることもできない。“抜けない宝刀”の破壊活動防止法と“オウム専用”の団体規制法があるのみで、社会を防衛する法の網は未整備のままである◆事件の前と後とで、何も変わっていないようにも見える。法廷の内であれ、外であれ、「つまらぬ遅延」がつづく限り、オウム犯罪の犠牲者に魂の慰められる日は来ないだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040227ig15.htm