悪のニュース記事

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2004年02月27日(金) 02時28分

2月27日付・編集手帳読売新聞

 英国の炭鉱では昔、有毒ガスを察知するために、作業員は坑内にカナリアのかごを持参したという。真っ先に悲鳴を上げて異変を知らせる「坑道のカナリア」はいまも比喩(ひゆ)に用いられる◆比喩そのままの情景をテレビ画面が映し出したのは一九九五年の三月である。警察によるオウム教団施設の一斉捜索で、毒ガスを警戒する機動隊員は鳥かごを携えていた◆教団にいち早く狂気を感じ取り、異変を知らせようとした「坑道のカナリア」は弁護士の坂本堤さんだろう。強制捜査に先立つこと六年、被害弁護団を組んで警鐘を鳴らした◆坂本さんに取材した未放映のインタビュー映像を教団側に見せたテレビ局まであったことを顧みれば、その悲鳴に当時の社会が耳を傾けたとはいえない。妻、一歳の長男とともに坂本さんは殺された◆一家殺害、地下鉄、松本両サリンなど十三の事件に問われた教祖に、東京地裁で判決が言い渡される。一家の無残な死から十四年、地下鉄サリン事件から九年、初公判から七年十か月の年月が流れている◆きのう、神奈川県鎌倉市の円覚寺松嶺院(しょうれいいん)を訪ね、坂本さん一家の眠る墓前にお参りした。被告の口からは何ひとつ真相が明かされないまま、むなしく幕を閉じる裁判である。正義感と使命感を貫いた警世のカナリアに、手向ける言葉を見つけかねた。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040226ig15.htm