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2004年02月24日(火) 00時00分

不祥事で考える 警官採用実情は…  東京新聞

 佐賀県鳥栖市で福岡県警警察官(24)が、小学生女児を連れ去ったとされる事件は、治安を守る立場の警察官の信頼を大きく損なった。逮捕された警察官は、勤務の評判は悪くなかったが、容疑をかけられてしまった。警察不祥事が続くなかで、気になるのはどんな人材を採用しているかだ。警察官の「採用」の実情をあらためて検証した−。

 ■終戦直後には入れ墨も可?

 「昔は簡単だった。前日に申し込んで、試験を受けることができたくらいだ。戦争直後には、入れ墨を背負った人でも、頭数をそろえるために採用したと聞いた。最近は買い手市場だから、ずっと試験は厳しくなっているはずだ」

 神奈川県警のあるOBは警察官の採用事情をこう話す。長引く不況で今、公務員は人気職種だ。応募が増えている警察官の採用だが、適性や資質をどうチェックしているのか。

 例えば、警視庁の昨年度採用試験は、採用職種によって若干の差はあるものの、第一次試験では、一般常識試験が二時間、それに論文試験などのほか、身長、体重などの身体検査と「警察官としての」適性検査がマークシート方式で行われた。二次試験では、面接のほか、医師の診察を伴う第二次身体検査、そして、記述式の適性検査が再度実施された。

 この二度にわたって実施される「適性検査」は、公開されている範囲では、一般企業でも実施されている内容といえる。ある警察庁関係者は「試験方法は各都道府県ごとに違うが、面接では志望動機や将来の具体的な希望などは聞くだろう。ただ、適性や資質を測る明確な基準があるわけではないと思う」と採用の「基準」の存在には否定的だ。

 「警察だから、ということで変わった試験を受けた記憶はない」。こう話すのは、大学卒業後、関東のある県警の採用試験を受けて合格しながら、結局、民間会社に就職した男性(41)だ。

 ■「人権配慮」で十分聞けない

 「一次試験は一般常識と、作文。面接は、一回だけで、『日本には政党は何がありますか』とか、聞かれた。当時は成田闘争が激しいころで、自分の身辺に過激派がいないか、調べていたのかもしれないが、面接では、直接的に聞かれることもなかった」と振り返る。

 しかし、警視庁のある元幹部は、「採用したら短銃を持たせるのだから、あらゆる手を使って、問題のある人物は排除しようと試みる」と指摘したうえで、こう続ける。「今も、やっているかどうか分からないが、採用されそうな人物について、交番の巡査を使って身辺調査のようなことはやっていたと思う」

 警視庁の別の元警察官は「感情のコントロールができる人が求められる。そうでないと捜査で挑発されてトラブルになったり、捜査の方向を見誤るからだ」と「基準」を示唆する。

 ただ元幹部は、「面接では本人以外の親族の事情など、今はあまり根掘り葉掘り聞けなくなっている」と、採用試験も人権に配慮することを求められ、十分な面接ができないと話す。実際、四年前に警視庁が警察学校入校者全員にHIV(エイズウイルス)感染検査を、本人に言明しないまま実施したとして問題化した。

 だが、ある警察庁幹部は「一連の警察不祥事が相次いで以降、ここ数年は面接時間を十分にとることと、面接官の訓練をするよう指導している」とこれまでの採用方法では不十分と認める。

 面接の重要性が強調される裏には、人気で応募者が増えていることも関係しているようだ。元警視庁巡査部長で、ジャーナリストの黒木昭雄氏は「警察職員の志望倍率が低い以前には、じっくり面接をして、内心をつかみ出すとか、広い視点から人材を選んでいた。最近は、不景気で、志望倍率が数十倍となり、学力的には優れている人が増えているが、それ以外の保証がなくなっている。僕らは警官になりたくてなったが、今は就職としての公務員、その中の選択肢の一つとしての警察になっている面もある」と採用試験の限界を指摘する。

 ■職種によって30倍を超える

 警視庁の昨年度採用試験の倍率は平均で男性一一・五倍、女性が一九・三倍。職種によっては三〇倍を超えたものもあった。

 一九七〇年代から、公務員試験も指導している大手予備校によると「数年前から、警察官の希望者は増えている。やはり安定性が魅力でもあるようだ。ただ、他の行政職と比べると、正義感が強く、社会貢献をしたいという目的がある子たちが多い」とも説明する。

 結局、「不祥事を起こすかどうかも含め、採用時に見極めるのは不可能」(前出の元警察官)というのが実情のようだ。

 昨年中に不祥事で懲戒処分を受けた警察官は四百三十三人で、ここ三年ほどは四百−五百人で推移している。ジャーナリストの大谷昭宏氏は警察官に求められる資質を「警察官に大切なのは志だ。安定した公務員として警察官を志望する者には耐えられない。ただ、筆記試験や、一、二度の面接で素行を見抜くのは難しい。警察学校を終了した時点で、任官前にもう一度ふるいにかける必要がある」と指摘する。

 警察学校では入校後、一般教養や法学、警察実務、武道や短銃操作などを六−十カ月間かけ研修を受ける。警察学校で、じっくりと適性を判断するのか。

 ■厳しい訓練に耐えられない

 前出の警視庁元幹部は「合格して警察学校に入って一年間、寮生活をするわけだが、この間にも気質など適性を見る。協調性やその他、警察官として問題があると判断された場合、配属前に説得して辞めてもらうこともありうる」と話す。

 だが前出の神奈川県警OBは「最近の若い子は、厳しい訓練に耐えられなくなっている」と嘆く。

 黒木氏は「不祥事は結局、個人の資質の問題で、それは見えにくい。だが今は学科試験から入るが、面接などで『なぜ警察官になるのか』という志望動機を見て、個人の内面を探り出すことが必要だ。時間をかけて適性を見る必要があり、警察学校に行ってる間もそうだ。学校に入っている間は、仮採用期間で、ここでふるいにかかるはずだが、今はお勉強の期間で、ちょっと我慢すればみな卒業していく。ふるいになっていない」と指摘する。

 ある警察関係者は「地方公務員法では、採用から六カ月はいわゆる試行期間で、この間に適性を見て不採用にもできる。だがこれを厳格に適用している自治体はない。運用を見直す必要もあるだろう」と指摘する。

 警察庁は悪化する治安対策に今年度から三年間で一万人の警察官増員をする予定だ。大谷氏はこう注文をつける。「どの役所も人員をどうやって削減するかに頭をひねっている。唯一、万単位で増えているのが警察官だ。治安悪化を理由にしているんだから、自ら犯罪者を出すことはこれまで以上に許されない」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040224/mng_____tokuho__000.shtml