悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2004年02月20日(金) 00時39分

<自社株購入権>課税処分取り消し求めた元社長、逆転敗訴毎日新聞

 ストックオプション(自社株購入権)で得た利益をめぐり、米国企業の日本法人の元社長が、「『一時所得』なのに、税金が高くなる『給与所得』として課税したのは違法」として、税務署による約8000万円の課税処分の取り消しを求めた訴訟で、東京高裁は19日、元社長の訴えを認めた東京地裁判決を取り消し、逆転敗訴を言い渡した。村上敬一裁判長は「ストックオプションは日本法人で働くことの対価として米国本社から与えられたもので、給与所得にあたる」と述べ、課税処分を適法と判断した。元社長は上告する方針。

 ストックオプション訴訟は全国で約100件が係争中で、高裁判決は初めて。地裁レベルでは「一時所得」か「給与所得」か、判断が分かれており、他の訴訟に影響を与えそうだ。

 訴えていたのは、大手半導体装置メーカー「アプライドマテリアルズ」の日本法人の八幡恵介元社長(69)。八幡元社長は米本社株のストックオプションを行使して得た96〜98年分の利益を一時所得として申告したが、00年になって税率がほぼ倍になる給与所得にあたるとして追徴課税された。東京地裁は03年8月、「権利を行使した時の株価の影響もあるので利益を生むとは限らず、(給与のように)会社から与えられたものとは言えない」と一時所得に当たると判断していた。

 高裁判決は「労働の質や量と利益額の関係が希薄でも、給与所得であることを否定すべきではない」と判断した。「一時所得と認めていた98年以前の国税当局の見解に従っただけ」との原告側主張についても、「98年以降に給与所得として申告した人との間に不平等が生じる」と退けた。【木戸哲】

 ■ことば(ストックオプション) 将来の一定の期間内に、会社の役員らが事前に決めた価格で自社株を取得できる権利。業績向上で株価が上昇すれば、市場価格との差で高額の利益が得られる。勤労意欲を高める効果があると言われ、米国では80年代から本格的に導入された。日本企業には97年の商法改正で解禁され、昨年6月末までの累計で、全上場企業の約3割にあたる1175社が導入している。

 ◇得られた利益を「労働の対価」と明確に認定

 ストックオプション訴訟の東京高裁判決は、社員の継続勤務を期待する制度の趣旨を重視して、得られた利益を「労働の対価」と明確に認定した。地裁でも課税処分を適法と認める判決が相次いでいるが、納税者には「突然、多額の課税をされて人生が狂った」と、方針変更を追認する司法判断への反発が根強く、課題が解決したわけではない。

 日本では84年以降、ストックオプションで得られる利益を「一時所得」とする申告が認められていたが、98年前後から、税率が高い「給与所得」とみなされ、それ以前に一時所得として申告した多くの人が追徴課税を受けた。

 この突然の方針転換を背景に、約100件の訴訟が全国で起こされたが、「氷山の一角」(原告側の鳥飼重和弁護士)とされる。「現場の裁量だけで方針変更を認めていたら、だれにいつ何が起きるか分からない」。訴訟を起こした別の外資系企業の元会長はこう懸念する。

 高裁として初めて課税を適法と認定した今回の判決は、今後の司法判断を大きく左右する可能性もある。しかし、法律や通達はなく、「給与所得」として課税する根拠はあいまいなままだ。納税者に納得してもらえるような説明が求められる。【木戸哲】(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040220-00000080-mai-soci