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2004年02月15日(日) 02時23分

2月15日付・読売社説(2)読売新聞

 [株式会社大学]「高等教育に新分野を切り開くか」

 「大学は、学術の中心として広く知識を授けるとともに…」と、学校教育法五二条に定義付けされている。「大学の権威」のよりどころだ。

 権威ある存在だから、運営には安定性と継続性が何よりも求められ、大学を設立できるのは、これまで国、地方自治体、学校法人に限られていた。

 「学術の中心」の自負から、資格取得や就職に結びつく実践的な教育は大学の役割ではない、ともされがちだった。

 そうした伝統的な大学観が、大きく揺らいでいる。

 文部科学省が大学設置・学校法人審議会の答申に基づき、資格試験の受験予備校、IT関連マルチメディアスクールを経営している教育関連企業二社に、大学、専門職大学院の設置を認可する。

 教育内容は、司法書士、弁理士などの資格取得、デジタル分野のプロデューサー養成などに特化したもので、実利的、実践的な色彩が濃い。

 経営している予備校などの施設をそのまま使い、教員も兼任とするなど、大学開設のコストを切りつめている。

 地域限定で規制緩和・撤廃を進める構造改革特区制度を利用し、東京都千代田区と大阪市が認可申請していた。

 「資格取得、実利を言うなら、なぜ大学という形態にこだわるのか」という批判が既存大学からはある。だが、学歴は大学で、資格取得は予備校で得ようとする“ダブルスクール族”の若者を引きつけることができる。単位互換で、他の大学の学生への単位授与も可能だ。

 アメリカでは、株式会社立の大学が、伝統的な大学に進学できなかった若者や再就職を目指す離職者、高度な技術を習得しようとする勤労者などのための「もう一つの大学」として定着している。

 日本でも、高等教育の新しい分野を切り開く可能性を持つ。会社立大学への社会的なニーズを開拓できるか、高い評価を受ける教育を実施できるかどうか、二社の今後に注目したい。

 営利事業としての大学の危険性も指摘されている。利益が上がらないからと閉鎖することがあっては、学生は行き場を失う。特区申請した自治体のチェック体制が欠かせない。

 設置形態、教育内容とも従来とはまるで異なる大学の認可は、「パンドラの箱を開けた」と評されてもいる。

 既存の大学も、「大学の権威」に安住することなく、教育内容が時代に合ったものになっているか、見直すことが必要だろう。二社の参入が認められた背景には、既存の大学に対する社会的な不満もあることを見落としてはならない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040214ig91.htm