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2004年02月15日(日) 15時58分

社説 もの造りの国内回帰を活性化のバネに日経新聞

 製造業が改めて国内でのもの造りを強化し始めた。背景には景気の回復があり、特に薄型テレビなどのデジタル家電の好調が大いに影響している。しかし高付加価値の製品を生み出す開発製造拠点として国内の利点を再認識する企業が増えており、一過性の動きとは思えない。

 国内への設備投資がこのまま広がっていけば、中国などへの生産移転に伴って懸念された空洞化に歯止めが掛かる可能性がある。これにより均衡の取れた国際分業体制の実現が期待される。

独自技術を極めるため
 例えば、独自技術に基づく製品に力を集中し始めた松下電器産業は、薄型テレビに使うプラズマディスプレーパネル(PDP)を増産するため、約600億円を投じて大阪府茨木市に新工場を建設中である。4月から稼働し、フル操業に入る2005年度には月産8万台の予定である。既存の国内工場の同3万台と中国での同2万台を合わせて、松下全体で国内生産を中心に年産150万台体制にする計画である。

 テレビ、DVD(デジタル多用途ディスク)、携帯電話などのデジタル製品を制御し特徴ある機能を付加するカギとなるシステムLSI(大規模集積回路)にも、同社は大型投資に踏み切る。競争力を左右する戦略商品だからで、新しい微細加工技術を応用する新工場を、富山県魚津市に約1300億円をかけて2005年末生産開始の予定で建設する。

 松下は海外生産を増やす一方で、他にまねのできない、日本発のブラックボックスの技術を開発して優位性を確保する戦略を立てている。それを推進するのに有用なチームワークと製品の小型化にたけた人材の集積が国内にある。「日本の特質ともいえるこれらを生かさない手はない」と中村邦夫社長は考えている。

 1月から三重県亀山市の新工場で世界で初めて第六世代の大型ガラス基板(1.5×1.8メートル)を使って液晶テレビの一貫生産を始めたシャープは、先端技術の事業化は「国内で極める」との方針である。亀山工場では8月から第二期の生産ラインを稼働させる。第三期も2004年度中に計画しており、累計投資額は約1500億円に達する。2005年末か06年初めの生産開始を念頭に第二工場の建設も検討中だ。

 同社は、このほかに2001年から今までにDVDの信号の読み取りなどに使う半導体レーザーや携帯電話などに使うシステム液晶、太陽電池の3つの事業で、国内に4工場を新増設した。これらの総投資額は1800億円近くに上る。

 先端的な製品を開発生産するには、高い技術水準の部品、材料を調達しなければならない。国内には開発力のある関連メーカーがそろっている。開発期間が短縮化しているので、関連部品メーカーとの連携はことに重要である。シャープの亀山工場を核に、その周辺には液晶用の光学フィルムを供給する日東電工などの工場が多数集まってきている。

 設備投資の国内回帰は工作機械の国内受注の好調によって裏付けられる。日本工作機械工業会の調べによると、1月の内需向け受注額は前年同月比34.9%増で、受注総額の同28.5%増を上回る。

 内需向け受注は昨年9月から400億円台に乗り、外需を上回る傾向が定着した。昨年12月上旬に同工業会がまとめた見通しでは、内需の上昇基調が今後も続き、年間受注総額は2003年の8511億円から06年には1兆1000億円に増え、うち内需が5600億円を占める。

空洞化傾向に歯止め
 日本能率協会が昨年夏に全国の主要企業の経営者を対象に実施した調査によると、製造業の「国内生産」は3年前と比べて現在「減少傾向」とする回答が42.5%と「増加傾向」の31.0%を上回り、空洞化の傾向を示した。しかし3年後の予想は「増加傾向」が38.3%に増え、「減少傾向」の26.2%を逆に上回っている。

 一時期、国内は研究開発に特化して生産は人件費の安い海外でやるというアイデアが一部にあったが、机上プランにすぎないことがわかってきた。開発と生産が二人三脚でなければ、高機能、高精度の商品の開発は困難である。

 為替の動向は、ドルに対して円高傾向で製造業には逆風である。しかし中国の人民元は今後長い目で見れば切り上がる公算があり、従来のようなバスに乗り遅れるな式の中国傾斜は見直しの時期を迎えている。

 製造業のグローバル化は、出と入りの動きが交じり合って進むのが自然だ。経営者は国内の経営資源の強みを生かす経営をさらに推進してほしい。政府は一層の規制改革や税制改革を進め企業努力を損なわないようにすべきだ。それは海外からの企業誘致にもつながり、日本の再活性化を確かなものにするはずである。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20040215MS3M1500915022004.html