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2004年02月08日(日) 00時00分

食の安全 画面に『ピッ』 東京新聞

 店頭で手にした野菜が、どこで、どんな肥料や農薬を使って育てられ、いつ収穫されたのか。ICタグ(電子荷札)を利用して、生鮮食品の履歴情報を消費者が瞬時に確認できる「トレーサビリティーシステム」の実験が東京と神奈川で行われている。食の安全への関心の高まりを受け農林水産省が行っているものだが、どんな仕組みなのか。 (鈴木 久美子)

 横浜市金沢区のスーパー「けいきゅう能見台店」。青果売り場に並べられた大根とキャベツに、〇・四ミリ角のICチップと約五センチの細いアンテナが入ったタグが張り付けられている。「ピッ」。読み取り機にかざすと、無線で感知したコンピューターから情報が呼び出され、画面に品種や等級、産地や流通経路、生産農家のメッセージとともに使用した農薬や肥料の種類、収穫日などが表示された。

 「情報を見せることでお客さまの信用を得られるようです。売り上げも増えています」と河野章店長。買い物中の五十代の主婦は「いいことですね。最近は偽装表示などもあるし、やっぱり安心できるものを食べたいですから」。

 実験は、トレーサビリティーシステム実用化に向け、農水省が本年度から三年計画で行っているものの一つ。和製基本ソフトのトロンを開発した坂村健・東大教授が代表をつとめる技術研究団体「T−Engineフォーラム」(東京都品川区)がシステムを開発し、一月上旬から今月六日まで、同店や京急ストア平和島店(東京都大田区)など三店舗で行われた。

 実験で販売された大根とキャベツは約三万個(価格は一個二百円前後)。農家は収穫すると、専用の読み取り機を使って情報をシステムのコンピューターに入力、野菜を詰めた段ボール箱に識別番号を入力したICタグを張って出荷する。農協も入出荷日などを入力、販売店が個々の商品にICタグをはる。店舗の端末にタグをかざすと、無線で識別番号などを読み取り、コンピューターに入力された情報を、消費者が瞬時に確認できる。店側も商品に問題があれば、すぐに流通経路や生産者をたどることができる。

 首都圏コープ事業連合(東京都文京区)も今月から、組合員に配達する鳥の空揚げなど一万一千パックにICタグを付けて管理する実験を行っている。組合員はパソコンや携帯電話からインターネットで産地情報などを知ることができる。

 商品のトレーサビリティーはこれまでも、バーコードなどを利用して行われてきたが、「今回使用したICタグ(ucodeタグ)なら情報量はほぼ無限」(坂村さん)。映像や音声表示もできるし、使用した農薬の名前と同時に農薬の使用基準を表示するなど、画面上で多様な関連情報を一緒に見せることも可能になる。レジ精算に使えば、無線でカゴごと精算でき、個々の商品のバーコードを読み取る今のやり方に比べ省力化や時間短縮にもつながる。

 だが課題はコスト。今回のタグは「一枚五十円程度」。普及を推進している国は「今後二年間で五円に抑える」と目標を掲げるが「一本百円の大根なら、一円でも高いのではないか」とみる関係者も。また坂村さんは「食品は偽装表示への罰則が甘い。偽情報を防ぐため厳しいペナルティーを課すよう制度化が必要だ」と指摘する。農水省は「技術的には既に実用化も可能で、まずは流通の物品管理などで広がるだろう」としている。ただ低価格商品の野菜などに広がるまでには「五年以上かかるのではないか」という。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040208/ftu_____kur_____000.shtml