悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2004年02月07日(土) 15時55分

道後温泉本館「塩素消毒」導入で“熱い論争”噴出読売新聞

 道後温泉本館を抱える愛媛県と松山市が、レジオネラ菌対策として、塩素消毒を導入したところ、学者らから異論が出され、その是非を巡って“ホットな論争”が巻き起こっている。

 「入浴客の安全が最優先。やむを得ない」とする施設管理の市に対し、学者サイドは「1度も菌が検出されておらず、行き過ぎ」「温泉文化を壊しかねない」と疑問の声。夏目漱石の小説「坊っちゃん」で知られ、日本書紀にも登場する最古の温泉地は、昔ながらの情緒と安全の間で揺れている。

 直接の“引き金”は宮崎県の入浴施設で起きた感染事故だった。2002年7月、風呂に入った200人以上が感染して7人が死亡。その後、各地で湯を循環させている施設で感染が相次いだため、愛媛県は県公衆浴場設置基準に関する条例の改正に取りかかった。

 具体的な衛生管理基準は自治体に委ねられ、湯の入れ替えや浴槽掃除が基本だが、菌の感染から客を守る最も効果的なものは塩素消毒だという。年間約130万人が訪れる道後本館は危険は少ないとされる「かけ流し(1度使った湯は捨てる)」方式だが、発症メカニズムが未解明であるため、県は「かけ流し」を含む全公衆浴場を対象に、あえて塩素消毒などを義務付ける条例改正を行い昨年10月、施行した。

 いまのところ市の検査で菌は同本館では検出されていないが、市は改正条例の施行に合わせ、源泉からの配管に1リットル中0・3ミリ・グラムの塩素を注入している。

 本館の入浴客からは賛否両論が寄せられ、「塩素は気にならない。むしろ安心」という意見がある一方、「においが気になる」「湯に道後独特のぬめりが少なくなった」との声もある。

 札幌国際大の松田忠徳教授(温泉文化論)は著書の中で「道後本館は3000年の歴史で発症例はない。循環式で行うような塩素消毒は行き過ぎ」と指摘。昨年9月、識者や旅館経営者が結成した「温泉学会」も「塩素が入り、湯が変われば温泉情緒が消えかねない」と、来月開かれる学会でこの問題を取り上げるという。

 温泉地がある全国各地の対策は様々だ。大分県は塩素消毒を「循環式」に限定。北海道や群馬、兵庫県などは対策を各施設に委ね、塩素消毒を条例に明記しておらず、群馬・草津や兵庫・有馬温泉の施設の中には塩素消毒はせず、毎日、掃除や湯の取り換えを徹底しているところもある。

 宮本比呂志・産業医大助教授(細菌学)の話「菌の有無に関係なく十把一からげの対応は疑問。検査頻度を上げ、『不検出』のデータを定期的に示す施設は規制の対象外とするなどして、納得してもらうほうがよい」

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20040207i409.htm