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2004年02月03日(火) 00時00分

小泉武夫の食味学 … そば読売新聞


水そばは作り手が茹で加減をみるために水につけて試食していたもの。今ではどの店でも、最初に水につけて食べることをすすめる  『続日本紀』に「養老6年(722)は夏に雨が降らず稲が生長しなかったので7月にそばを植え、荒年に備えた」と見えるように、すでに奈良朝以前にそばは植栽されていた。当時は、そば粉を熱湯で固く練って熱いうちに食べ、その食法は江戸期まで続く。いわゆる「そば掻き」である。その後「つなぎ」を考え出し、それでつないで細長い麺としてからは、汁をお伴として食べるようになった。

 それ以後、そばは食味というものも大切な具備条件となり、いかに美味しいそばを栽培するか、涎流させの汁をつくるか、ということにも日本人の心を釘付けさせた。実はそばは、食べるだけでなく昔から魔除けや疫病神の退散に関わる民俗行事にも頻繁に使われている。

 例えば流行病の際には、そばの実を紙に包んで家の戸口に吊るし、疫病神除けの呪いにした。また、東北地方の山村には正月15日の夜にそば団子を作ってそれを桑の枝に刺し、害鳥除けと同時に豊作を祈願した。こういう習俗行事は全国あちこちの山間地にあった。こうしてハレの日の食べものということにもなり、今でも結礼や結納の宴席には必ずのようにそばが出され、また年越しのそばもある。

 さらに健康食としての捉え方もあって、江戸中期の『本朝食鑑』には、「そばは気を降ろし、腸胃の滓穢を寛にし、水腫、泄痢、腹痛、上気を治し、気盛んにして湿熱ある者によろし」とある。近年になって医学や生理学、栄養学の発展に伴い、そばの持つ健康機能性が研究され、そこからはさまざまなことがわかってきた。とりわけ他の穀類よりはるかに多く含む「ルチン」(ビタミンP)は、毛細血管の透過性を維持する作用が強く、これが毛細血管の強化や血流の正常維持に効果ありとされて、今日では脳溢血やクモ膜下出血、さらには静脈瘤破裂といった血栓原因症の予防に効果ありとされている。

旅行読売2004年1月号より

http://www.yomiuri.co.jp/tabi/gourmet/fudoki/fd040103.htm