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2004年01月29日(木) 02時38分

1月29日付・読売社説(1)読売新聞

 [鳥の感染症]「『食』と『健康』への重大な脅威だ」

 強毒型の鳥インフルエンザが中国でも発生し、感染はアジア全域に広がっている。

 昨年末からこれまでに、日本を含む十の国・地域で感染が確認された。さらに拡大の様相をみせている。

 政府は発生した国や地域からの鶏肉類の輸入を停止した。消費者や外食業界などへの影響は甚大だ。国内での感染は一か所にとどまっているが、内外の感染拡大阻止に全力を挙げねばならない。

 感染症の専門家が最も危惧(きぐ)するのは、鳥インフルエンザ・ウイルスが人から人へ感染する「新型インフルエンザ・ウイルス」に突然変異することだ。世界保健機関(WHO)も声明を出し、「感染力の強い危険な人間の伝染病に変異する可能性がある」と強く警告している。

 「食の安全」と「人の健康」を守るには、関係国が一致協力して感染した鶏などを速やかに処分し、感染を封じ込めるしかない。地球規模の監視と対策の徹底が求められている。日本も、資金面や技術面の支援を惜しんではならない。

 情報開示の重要性も改めて強調しておきたい。感染症対策の基本は迅速な初期対応に尽きる。だが、今回は多くの国で感染の確認や公表が遅れた。昨年の新型肺炎(SARS)の教訓が十分生かされているとは言い難い。

 過去に大流行した新型インフルエンザには、一九一八年のスペイン風邪、一九五七年のアジア風邪、一九六八年の香港風邪がある。中でもスペイン風邪は弱毒型ウイルスにもかかわらず、世界中で約四千万人の死者を出したとされる。

 今回の鳥インフルエンザは強毒型ウイルスだ。このウイルスが新型インフルエンザ・ウイルスに突然変異すれば、スペイン風邪を上回る未曽有の健康被害と社会混乱をもたらす恐れがある。国際連携と同時に、国内の備えも欠かせない。

 早急に検討すべきは、治療薬の国家備蓄だ。インフルエンザ治療に使われる抗ウイルス剤は新型インフルエンザにも有効とされ、坂口厚生労働相も備蓄の必要性を認めている。具体化を急ぎたい。

 一方、現在のインフルエンザ・ワクチンは新型には効かない。現在、新たなワクチンを作るのに半年程度かかる。遺伝子組み換えなど最新技術を駆使した開発期間の短縮が望まれる。大量のワクチンを製造・供給する体制整備も必要だ。

 新型インフルエンザが発生すれば、SARS同様、強制隔離などの措置を迅速に発動しなければならない。ためらっていては取り返しがつかない。国や地方自治体は詳細な行動計画を作り、実地演習なども行っておくべきだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040128ig90.htm