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2004年01月28日(水) 03時03分

1月28日付・読売社説(2)読売新聞

 [裁判員制度]「意見書の趣旨から離れる与党案」

 国民が裁判官と共に刑事裁判に参加する「裁判員制度」の基本型が、自民、公明両党の与党協議で正式に合意された。

 焦点の合議体の構成について与党案は、「裁判官三人、裁判員六人」を原則とした。被告が起訴事実を認め、検察と弁護側の双方が同意した場合、裁判所は、「裁判官一人、裁判員四人」も選択できる。

 政府の司法制度改革推進本部は、与党案をもとに法案を今国会に提出する。

 裁判員制度では、死刑なども想定される重大事件について、無作為に選ばれた裁判員が、裁判官と共に有罪か無罪を決め、量刑まで判断する。判決は多数決によるため、裁判官と裁判員の構成比が、制度のあり方を大きく左右する。

 合意された与党案は、裁判官と裁判員の「人数合わせ」にとどまり、参加する国民の側に立った議論は、十分に尽くされなかった。例えば、仕事を抱える国民にとって、具体的にどんな条件が整えば辞退できるのか、など重要な問題だ。

 このままでは裁判員制度が、あるべき姿を提言した司法制度改革審議会の最終意見書の趣旨と離れる可能性がある。

 意見書は、制度改革の目的を、「国民の健全な社会常識を刑事裁判に反映させること」とし、構成比で裁判員が主役となる「陪審型」を排除した。

 裁判員に選ばれた人たちが、必ずしも十分な法律上の知識や判断力を備えているとは限らない。その人たちの多数の判断で「被告に不利な決定ができないように」との配慮からだった。

 与党協議では、自民党が「裁判官三人で裁判員四人程度」を主張したのに対し、公明党は「裁判官二人、裁判員七人」の“陪審型”に固執した。

 土壇場で、公明党が裁判官三人を認める代わりに、自民党は裁判員数を増やすほか、選択規定として「裁判官一人、裁判員四人」とすることを受け入れた。

 被告が起訴事実を認めた場合の選択規定は、審議会の意見書では全く触れられていなかった。重大な事件では裁判官三人が合議し判断に慎重を期す現在の刑事裁判との違いが、大きすぎないか。

 公判途中で、被告が起訴事実を否認することは少なくない。その場合どうするのかも、明らかにされていない。

 裁判員制度が導入された場合、選ばれた人の負担は重い。与党案では、裁判所が判断する「一定の理由」がない限り出廷しなければならない。守秘義務に違反すれば、懲役刑も科せられる。

 法案策定にあたっては、審議会の意見書が示した制度改革の趣旨を反映するよう、努める必要がある。

 

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040127ig91.htm