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2004年01月25日(日) 02時12分

1月25日付・読売社説(1)読売新聞

 [特別控除縮小]「負担増はやむを得ないが……」

 個々の政策は妥当でも、それが積み重なった時に大きなマイナスをもたらすことがある。

 個人に負担増を求める税制や年金制度の改革と景気の関係もそんなケースに当たる。

 政府は負担増の累積が、個人消費に与える影響に細心の注意を払わなければならない。万一、深刻な落ち込みがあるようなら、増税や保険料引き上げを再検討する柔軟性も必要になるだろう。

 今月からは、全国約六千三百万人の就業者のうち、約一千万人の手取り給与が減少する。昨年の通常国会で税法が改正され、所得税の配偶者特別控除の一部が廃止された。それによる増税が今月、実施に移され、影響が表に出る。

 配偶者特別控除は、パートに出ている主婦の年収が一定額を超えると、夫が配偶者控除を受けられなくなり、夫婦合計の手取りが減ってしまうという「パート問題」を解決するために創設された。

 本人の年所得が一千万円以下の人を対象に、配偶者の所得の多寡によって、ゼロなら最高額の三十八万円を、本人の所得から差し引いてきた。

 しかし、政府税制調査会などで、三十八万円ある通常の配偶者控除に加え、特別控除も認めるのは「配慮のし過ぎ」とされ、この上乗せ分が廃止された。

 最も影響が大きい世帯では年間で約七万三千円の増税となる。だが、所得税の空洞化を防ぐため、他に先駆けて実行すべき措置だった、とも言えるだろう。

 今の通常国会で税法改正案が成立すれば、今年六月から中小市町村の住民税均等割りが年五百〜一千円増税される。来年には一月から、年金受給者への課税が強化され、六月からは所得のある妻への住民税均等割りの課税も始まる。

 また、年金制度改革が与党案通りに実施されれば、今年十月から厚生年金保険料の自己負担分が、月給三十万円で月五百円程度引き上げられることになる。

 国も地方自治体も財政は火の車だ。相次いで実施される負担増の背景には、不公平の是正や制度の維持といった、やむを得ない理由が、それぞれにある。

 しかし、一九九七年、回復しかけていた日本経済は、消費税率の引き上げ、所得・住民税の特別減税廃止、医療費自己負担の引き上げという約九兆円に及ぶ国民負担の増大で一気に腰を折られた。

 この教訓を忘れてはならない。

 今回は、負担増の規模が、今年末の焦点となる定率減税の廃止・縮小を除き、それほど大きくない。だが、少しずつ間を置きながら、負担増が相次ぐことの心理的なマイナスは軽視できない。油断は禁物である。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20040124ig90.htm