悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2004年01月24日(土) 06時03分

MLで個人情報保護法案反対の研究員戒告 経産省研究所朝日新聞

 経済産業省所管の独立行政法人、経済産業研究所(岡松壯三郎理事長)が、研究所のメーリングリストを使って個人情報保護法案に反対するアピールの賛同者を募ったとして、幹部研究員を懲戒処分(戒告)したことがわかった。担当大臣の問い合わせを受けた同省から「処分方針」の報告を求められた同研究所が新たに明文規定を作り、さかのぼって適用、処分した。

 処分を受けたのは池田信夫・上席研究員(50)。13人いる上席研究員の1人で、情報経済論の専門家。個人情報保護法案についても積極的に発言している。処分は昨年6月にあり、岡松理事長や青木昌彦所長も管理責任を問われて訓告、佐伯英隆副所長も厳重注意とされた。

 同省や研究所によると、池田研究員は昨年4月初め、同研究所の研究員のほか政府関係者や大学教員、メディア関係者ら約120人が参加するメーリングリストに「インターネットを規制する個人情報保護法案に反対する」との内容の「緊急アピール」を掲載。「賛同する方は私まで連絡を」と呼びかけた。政府案だけでなく、野党案についても「規制を強化するもので、さらに危険」と批判した。

 青木所長やほかの研究員数人も賛同者になった。その後アピールは研究所のホームページにも掲載されたが、「執筆者個人の責任で発表し、研究所としての見解を示すものではない」とただし書きがあった。

 問題となったのは、社民党の保坂展人衆院議員(当時)が4月下旬、国会の特別委員会でこのホームページを取り上げ、法案の問題点を指摘したことから。細田博之・情報通信技術(IT)担当相(当時)は答弁では言及しなかったが、その後経産省に事実関係を問い合わせたという。

 同省は研究所に「是正措置や関係者の処分方針」の報告を求め、事実上処分を促す文書を出した。同省や研究所によるとこうした文書は異例という。

 研究所は6月中旬、どのような署名活動が就業規則違反になるかを細かく明文化する通達を出した。この中で、新たに「研究所の施設やウェブサイトなどを使って署名を集めるのは業務の範囲を逸脱する」という趣旨の解釈規定を設け、これを適用して6月30日付で処分した。

 個人情報保護法は5月下旬に成立した。

 研究所は「研究員の学問、言論の自由は守られている。政府方針に反対しても構わないが、池田研究員の行為は一線を超えると判断した。改善を求めたが、受け入れられなかった」と説明する。

 池田研究員は「処分は事前に何の通告もなかった。最初の段階で、これは署名運動ではないと説明し、了解も得ていた。明文規定を作った後にさかのぼって処分したのも法治主義の原則に反する」と反論している。

 経済産業省政策企画室の話 池田研究員の署名集めは行き過ぎた政治的活動だ。研究所に処分を求めたわけではなく、あくまで研究所の判断だ。

 【経済産業研究所】87年に旧通産省が設立した通産研究所が前身で、01年に独立行政法人になった。経済産業政策に関する調査研究のほか、世界に向けて公共政策に関して提言することを目的としている。国内外の民間有識者や大学研究者を研究員として招請している。研究員は約90人。(01/24 06:03)

http://www.asahi.com/national/update/0124/006.html