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2004年01月22日(木) 19時05分

[ニュースワイドとちぎ]急増する架空請求 苦情の6割占める /栃木毎日新聞

 ◇県消費生活センター
 県内で架空請求が急増している。今年度に入ってから、県消費生活センターに寄せられる苦情のうち、約6割が架空請求に関するものだという。法律用語を使い不安感を増長させるなど、手口が巧妙になっているほか、ターゲットも広がっている。増加の背景に、取り締まりが強化されたヤミ金融から転じた業者が多いとの指摘もある。記者の体験をもとに、実際の被害に遭わないためのポイントをまとめた。【川端智子】
 ◇「電話は危険」県警強調
 ◇架空請求の手口
 架空請求とは、利用した覚えのない借金や債権の取り立てを行うもの。多くは、債権回収会社を名乗り、通信販売料金や有料サイトの使用料、レンタルビデオの延滞料などの回収の委託を受けているという内容だ。請求の手段は封書やはがき、電話、メールなど多岐にわたる。
 大半は、連絡先として書かれた携帯電話の番号に至急連絡するよう求めている。他人に金品を請求する際に必要な「権源」(代金や借金の内容など)は記載されていないほか、債権を譲渡した原債権者の名前がないなど、債権請求に必要な事項は未記入で実際には効力がないのも特徴だ。
 ◇ターゲットの拡大
 架空請求は、01年ごろから見られるようになった。県消費生活センターによると、当初は多重債務者、破産経験者などのリストを使う場合が多く、ターゲットも20〜30代の男性が中心だった。しかし、昨年の7月ごろからは、女性や60代以上の高齢者、高校生などにも広がっている。
 県内の一部地域の19歳に被害が集中したことがあり、同センターが調査したところ、ある高校の卒業名簿を使われたケースもあった。同センターは「最近の傾向として、各種名簿が使われており、だれがターゲットになってもおかしくない状況」と話す。請求内容も次第に巧妙になり、文面に法律の条文や弁護士などの言葉を利用し、不安感をあおるようなものも登場している。
 ◇増加の背景
 県警は架空請求急増の理由に、ヤミ金融への取り締まりが強化されたことを挙げる。出資法が定める上限金利(年29・2%)を超える高金利で融資するヤミ金融の被害が深刻化したことから、国は昨年9月、出資法と貸金業規制法を改正した「ヤミ金融対策法」を施行した。
 架空請求はその前後から急増した。県警生活保安課は「ヤミ金融の営業が厳しくなったことから、短期間で稼げる架空請求に流れているのではないか」と指摘。ヤミ金融を資金源としてきた暴力団が、架空請求に切り替えたと推測する。
 ◇被害回避の方法は
 「何よりも、絶対に連絡を取らないこと」と県警生活保安課は強調する。「電話をかければ、ナンバーディスプレーで自分の電話番号が漏れる可能性がある。個人情報をさらすことになる」と警告する。
 昨年ごろから都市銀行が架空口座など問題のある口座の閉鎖を進めたことで、最近は、架空請求の文面には銀行口座と振込金額が書かれていないものがほとんどだ。電話をかけると「本当は30万円だが、すぐに振り込めば3万円にまける」と業者は払える額を提示。「これで済むなら」と払う被害者が少なくないという。インターネットの有料サイトをかたることで、「もしかして使ったかもしれない」と思う消費者心理を巧みに利用しているとも指摘する。
 一方、摘発が極めて難しいのも現実だ。大半の業者が持ち主が特定されないプリペイド携帯電話や架空口座などを利用し、1、2カ月の短期間荒稼ぎした後、事務所の場所や業者名を変える。「まさにいたちごっこ」(同課)で、捜査しても容疑者にたどり着かないケースが多いという。同課は「文面で脅していても、家や会社などに来ることはあり得ない。姿を現し通報されれば、捕まることを業者が一番よく知っている」と話す。
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 ◇記者も体験した
 そのメールが記者の携帯電話に着信したのは、昨年10月10日の昼過ぎだった。見覚えのないショートメール(携帯電話の番号でやりとりできる簡易メール)。早速、開封してみると、「コンテンツ料金未納。連絡なき場合、身内、勤務先にご連絡になります」と、脅迫ともとれる文面がつづられている。文末には東京の電話番号と担当者の名前も書かれている。
 一瞬、ぎょっとしたものの、以前、架空請求の取材をしたこともあり、すぐにピンときた。よくあることと、そのままほっておくことにした。
 11日後の同21日朝。違う番号のショートメールが、再度送られてきた。「当社の最終警告の返答がなかった債権譲渡します。午後3時まで猶予をあたえる」。東京の電話番号は一緒で、一段と脅迫色が強くなっていた。
 最初のメールで、請求の理由にコンテンツ(有料番組)の料金未納が書かれていたこともあり、「もしかしたら、知らないうちに使ってしまったのか」と不安がよぎった。一方、どんな業者がやっているのか、好奇心も首をもたげる。早速、メールにある東京の電話へかけてみることにした。
 非通知設定にしてかけてみると、20代後半から30代くらいの男性が出た。会社名も何も名乗らない。メールをもらったことと担当者の名前を告げると、同年代らしい別の男性が電話口に出てきた。
 会社名と所在地、何の請求かを問いただす。男性は会社名を「○○システム」と名乗り、所在地は東京としか言わない。請求については、「当社は複数の取引先を持っており、名前、電話番号を言ってもらわないと、答えられない」の一辺倒で、らちが明かない。
 少しでも具体的な情報を引き出そうと、どのような会社から債権の譲渡を受けたのか、どこに譲渡するのか、「○○システム」がどんな会社かなど、粘り強く聞くと、男性の態度が悪くなった。次第に声を荒らげ、最後は「あなたが3時までに金を払わなければ、債権を譲渡するだけ。譲渡先は私たちよりも厳しい取り立てをする。苦しめばいい」との捨てぜりふをはいて、電話を切られた。
 不安になり県警生活保安課に相談に行くと、開口一番、担当者に「電話しちゃだめだ」ととがめられた。担当者は通信手段が携帯電話の番号で送られるショートメールだったことから、多分、無作為に送っているのだろうと予測し、「今度来ても、絶対、連絡したらだめだから」と念を押された。
 あれから3カ月近くたつが、それ以降、連絡は一切ない。今回、この原稿を書くにあたり、同じ電話番号へ電話を何度もかけてみたが、話し中で連絡が取れなかったことを付記しておく。
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 ◇県消費生活センターに寄せられた苦情件数(今年度)◇
        4月  5月  6月  7月   8月   9月  10月 11月  12月   合計
苦情件数   642 716 839 866 1052 1538 1658 946 1574 9831
うち架空請求 223 295 356 407  675 1113 1120 435  703 5327(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040122-00000002-mai-l09