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2004年01月21日(水) 00時00分

牛丼危機 飽食の土台はもろい 東京新聞

 米国で見つかった一頭の病牛が、日本の牛丼店のメニューを塗り替える。鳥インフルエンザ、コイヘルペス、そして戦争…。もう地球に「対岸の火事」はない。消費者も意識改革を迫られている。

 飽食の土台は、もろい。

 牛丼一筋、二十四時間営業が売り物の吉野家が、一部店舗で深夜営業を中止し、カレー丼などの新メニューを並べ始めた。肉量が多い特盛も姿を消した。他店では、豚丼の販売にも踏み切った。

 何しろ、年間三万トンに上る使用牛肉の99%が米国からの輸入頼みだ。並一杯二百八十円。吉野家はデフレ下の過酷な低価格競争を、単品主義と一括輸入で勝ち抜いてきた。ところが、今度の米BSE(牛海綿状脳症)騒ぎでは、終夜営業の便利さや超低価格を支える糸のか細さが、図らずも露呈した。

 仙台では、牛タン専門店が危機に立つ。杜(もり)の都の名物も材料は約七割が、米国からの輸入である。原料費は平時の四割高。在庫は一−四カ月分しかないという。

 牛肉の自給率は四割強。輸入先はほぼ米豪二国に限られる。過度な依存は、やはり危うい。とりあえず豪州に頼ろうと思っても、そうは問屋が卸さない。韓国なども同様にそちらへ走る。輸入枠を急に増やすのは難しい。豪州産の輸入価格は、前年同期比で75%も上昇している。

 岐阜県は、BSE発生などの有事に備え、県独自の「食料確保マニュアル」を策定する。決して大げさなことではない。今度の“危機”をきっかけに、食品業界は、輸入先の多角化など、有事に備えた主要食料のバックアップ体制を強化し、政府としても自給率向上に本腰を入れるべきである。

 消費者側も、値段の安さだけでなく、安心、安全が持つ価値により理解を広げる必要があるだろう。

 食の国際化は急速に進展し、彩りは豊かになった。だが、その裏で流通の網の目は、複雑になりすぎた。

 「フード・マイレージ」という新語が、昨年の農業白書と環境白書に現れる。食料輸入量に輸送距離をかけたもの。白書によると、わが国のフード・マイレージ(二〇〇〇年)の総計は約五千億トンキロと、人口比で米国の八倍にも上る。

 輸送による環境負荷もさることながら、長い“旅路”に未知の危険は付き物だ。安価な牛丼を二十四時間、好きなだけ食べられたつい先日までの状態が、果たしてこの国の「食」の本当の姿かどうか。食の提供者、消費者ともにじっくり味わい直してみたい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040121/col_____sha_____003.shtml