悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2004年01月14日(水) 00時00分

鳥とインフルエンザの関係 東京新聞

 七十九年ぶりに日本に上陸した鳥インフルエンザウイルスは、ヒトのインフルエンザウイルスに突然変異する可能性が指摘されている。日本のヒト社会で例年のように流行する「Aソ連型」「A香港型」ウイルスなども、“起源”をたどると、鳥インフルエンザに行き着く。鳥とインフルエンザとの関係は−。

 山口県の鶏卵養鶏場で見つかった鳥インフルエンザウイルスは、大流行している韓国から飛来した野鳥から感染したとの見方が出ている。鳥インフルエンザウイルスには「故郷」があると指摘するのは、北海道大学大学院獣医学研究科の喜田宏教授(獣医学)だ。

■北極圏近くで冷凍保存され

 「鳥インフルエンザウイルスは北極圏に近い(バイカル湖周辺などの)シベリア、カナダ、アラスカの湖周辺から来たと考えられている。ウイルス自体は世界中に存在するが、これらの地域では冬季にウイルスが冷凍保存されてきた」

 それがどうやって人間の住む社会までやってくるのか。喜田教授は「人類が生まれる以前から野生のカモとウイルスは共生してきたと考えられる」と説明する。渡り鳥のカモが運び屋になっているというのが専門家の一致した見方だ。宿主となるカモは、ウイルスに感染しても病原性は持たず、発症しない。ウイルスはカモの腸内で増殖し、ふんとして水の中に排せつされる。

 ウイルスを増殖させたカモが越冬のため、アジアでは中国南部などに移動してくる。そこで水中に排せつすると、今度は水鳥である野生のアヒルに感染。次に人間のそばで飼育されているアヒルに感染する。それが家畜のニワトリなどに感染し猛威を振るうのが感染経路ということらしい。

 厚労省は「鳥からヒトへの感染はまれ。鶏卵や鶏肉からの感染もまずない」と説明している。東京大学名誉教授の山内一也氏(ウイルス学)も「ヒトに感染すると毒性が強い場合があるが、これまでの香港などの事例を見るとそう簡単にヒトには感染しない。熱に弱いウイルスなので、ウイルスが付着した鶏肉や卵も加熱調理すれば心配ない」と話す。

 これだけなら家畜だけの問題だが、鳥インフルエンザウイルスは、ヒトとヒトの間で感染するヒトのインフルエンザウイルスに変異することが指摘されている。両者の接点がブタだという。アヒルなどのふんで汚染された水を飲んだブタが鼻の部分で感染する。

 ここまで感染が進むとウイルスは「ヒトと動物の壁」を越えることがある。岐阜大名誉教授の平井克哉氏(獣医学)がいわゆる「人獣共通感染症」について説明する。

 「鳥インフルエンザウイルスがブタに感染すると変異し、ヒトに感染するインフルエンザウイルスの遺伝子構造と似てくる。アヒルから感染したブタが、同時にヒトのインフルエンザウイルスにも感染すると、ヒトにも感染する新型のウイルスに変化する」と言うのだ。

 「一方で、ヒトのインフルエンザ用のワクチンを開発、投与するなどによって、ウイルス自身が生き延びるために、変化し、本来、ヒトにしか感染しないウイルスが今度は動物にも感染するようになる」。まさに生存をかけたインフルエンザウイルスと人類のいたちごっこが展開されることになる。

 ヒトのインフルエンザウイルスにはAソ連型(H1型)、A香港型(H3型)などがあり、冬季にはやるのはこの二種が主体だ。一九一八年に大流行し、国内で二千万人以上が感染、三十八万人以上が死亡したスペイン風邪はAソ連型。六八年の香港風邪はA香港型だ。五七年にはアジア風邪(H2型)も流行した。

■36年前の香港風邪で大被害

 感染症の専門家などによると、ヒトの新型インフルエンザは、十−四十年周期で大流行するとされており、二十世紀最後に多数の犠牲者を出した香港風邪からすでに三十六年が経過、「いつ大発生してもおかしくない」(平井氏)状態だ。

 その“発信源”として気になるのが中国だ。

 九七年には香港で、今回、韓国で確認されたと同じ「H5N1」という型の鳥インフルエンザウイルスにニワトリが感染、百五十万羽を焼却処分した。香港では九九年以降も毎年のように発生している。

 今冬、三例目の感染者が確認された「新型肺炎(SARS)」の場合、死者は出ていないが、中国・広東省の市場で販売されていた食用のハクビシンが感染源との疑いが強まり、大量に押収、処分されている。

 平井氏は「中国南部が渡り鳥の飛来経路になっていることと、広東省などの地域では、動物とヒトが同じ敷地で生活しているケースが多く、接触の頻度が高いためではないか」と指摘する。

 山内氏は「広東省などには、そもそも自然界では一緒に生息しえない野生動物が市場で一緒に売られている。未知のウイルスがそこで別の野生動物に感染し、ヒトに感染することも考えられる」と話す。

 実際、鳥インフルエンザに限らず、近年の研究で、数多くの人獣共通感染症があることが分かってきている。厚労省によると、エボラ出血熱はミドリザルなどから、狂犬病やエキノコックス症(多包虫症)はキツネから、ペストやラッサ熱はプレーリードッグなどネズミの仲間から感染する。

■山火事拡大を防ぐのと同じ

 今回の鳥インフルエンザウイルスが、ヒトの新型インフルエンザウイルスに変異するかどうかについて、山内氏は「鳥インフルエンザが流行した香港でヒトの新型ウイルスは出ていない。今回もいわゆるヒトの間で感染する新型インフルエンザになるとは思えない」と冷静に受け止めるべきだと話す。

 最後に平井氏は防疫の方法をこう例える。「山火事の拡大をどう食い止めるのかと同じ原理だ。木を切り倒すのが最善の方法。ウイルスが新型に変異を起こすチャンスを与えないためには、問題のウイルスそのものを駆除することが近道。BSE(牛海綿状脳症)や口蹄(こうてい)疫を短期間のうちに制圧したのもこうした徹底対策があったから。感染源と感染ルートが解明できれば防御できる」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040114/mng_____tokuho__000.shtml