2004年01月13日(火) 00時00分

わいせつ漫画で初の有罪 東京地裁判決 （東京新聞）

　性器をあらわにした漫画を販売したとして、わいせつ図画販売の罪に問われた出版社「松文館」（東京）社長貴志元則被告（５４）の判決が十三日、東京地裁であった。中谷雄二郎裁判長は「性器の描写に迫真性や生々しさがあり、読者の好色的興味に訴えるのが目的。このような漫画本を許す社会通念は現在でも存在しない」として、懲役一年、執行猶予三年（求刑懲役一年）を言い渡した。漫画のわいせつ性が争われた裁判の判決は初めて。同被告側は同日、控訴した。

　問題とされたのは、短編漫画八編をまとめた単行本「蜜室（みっしつ）」（百四十四ページ）。

　中谷裁判長は、インターネットなどの影響で性表現が過激化、多様化している状況が「性道徳の維持に脅威を及ぼしかねず、性犯罪の激増とも関係がある」と指摘。漫画は小説などと比べて性的刺激が強い上、「蜜室」は全体のページ数の約８２％が性器や性交などの描写に使われ、「露骨で過激な性表現物」になっていると判断した。

　その上で「大胆で悪質な犯行だ。性道徳や健全な性風俗に与えた悪影響は軽視しがたい」と、貴志被告を批判した。

　同被告の弁護側は「描写が誇張されていてリアル（本物のよう）ではない。写真やアダルトビデオほど性欲を刺激しないし、物語性もある。十八歳未満が購入できないようにもしていた」と主張していた。

　判決によると、貴志被告は漫画家＝五十万円の罰金刑＝らと共謀。二〇〇二年四月から五月までの約一カ月間に、都内の書籍取次店など十六社に漫画本「蜜室」約二万冊を一冊約千二百円で販売した。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20040113/eve_____sya_____004.shtml