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2004年01月13日(火) 14時01分

社説2 人畜共通の感染症を抑え込め日経新聞

 日本では79年ぶりに見つかった鳥インフルエンザウイルスで、養鶏場のニワトリが大量死したというニュースを聞いて、背筋がぞくっとした人は多いだろう。疫病による大量死を文明が克服したわけではないことを、改めて思い知らされた。

 高密度で大量の家畜や家禽(かきん)を飼育する近代的な畜産は、感染症被害では、むしろかつてより大きなリスクを背負うようになった。肉骨粉の利用のように、効率的な資源循環が、逆にBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)のような、新しい感染症のリスクを追加させた例もある。

 今回の鳥インフルエンザウイルスでも、韓国での流行を日本に伝播(でんぱ)した主役は渡り鳥ではないかと疑われている。国境を越えて移動する野生の鳥や、飛行機や船に潜んで病原体を運ぶネズミやノミのような衛生動物を、完全にシャットアウトすることは不可能だ。

 市場がグローバル化し、人と物が地球上を動き回る。変異しやすい病原ウイルスも世界を飛び交う。彼らが不幸な出合いによって変身を遂げて、新たな感染力や強力な毒性を獲得してしまうリスクは、むしろ増しているとみる専門家もいる。

 国際社会は、新型の感染症が唐突に文明を襲うリスクを十分認識した上で、その被害を最小に抑え込む技術とシステムを備えるべきである。生命科学や畜産技術の進歩は、感染源を科学的に突き止め、その発生リスクを合理的に減らすことにおおいに役立つはずだ。

 SARSも鳥インフルエンザも、肝心なのは感染源の特定である。対症療法で当座の問題を片づけることは当然だが、感染源が解明されない限り、社会の本源的な不安は解消されない。今年も中国・広州でSARSの患者が発生していることを考えれば、中国の衛生当局はWHOの調査に協力して感染源の特定を急ぐのが、筋ではないだろうか。

 幸い、SARSは初期に適切な治療をすれば致命的な病気とはいえない。また、鳥インフルエンザも鶏の肉や卵から人に感染した例はまだ報告がなく、人間への脅威はそう大きくはない。あつものに懲りてなますを吹く愚は避けつつ、のど元過ぎても熱さを忘れてはなるまい。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20040113MS3M1300J13012004.html