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2004年01月09日(金) 13時11分

社説2 暴力団排除へからめ手策日経新聞

 暴力団抗争の巻き添えを食った市民が簡易・迅速に損害賠償を求めることができる法律を、警察庁が検討している。暴力団対策法を改正し、暴力団同士の抗争で組員が他人に損害を与えた場合、組織のトップである指定暴力団の組長に賠償責任を負わせようというものである。

 被害者の泣き寝入りをなくすだけでなく、暴力団抗争への抑止効果も期待される。だが暴力団トップの民事責任追及はあくまでからめ手の対策である。暴力団根絶には取り締まりの強化と暴対法の積極的な運用、暴力団排除措置の徹底が望まれる。

 暴力団抗争に一般の市民が巻き添えになる事件が後を絶たない。昨年1月、前橋市のスナックで拳銃乱射事件があり、4人が死亡し、2人が重傷を負った。警察は、元暴力団組長を狙った抗争事件とみているが、店に居合わせた客3人も死亡した。犯人はまだ捕まっていない。

 犯人の供述などから警察庁が認定した暴力団抗争は、過去11年間に88件あった。このうち85件で一般の市民が被害を受け、2人が死亡し8人が負傷している。

 だが被害弁償はほとんど進んでいない。直接手を下した末端組員には支払い能力がなく、幹部の民事責任追及も難しい問題があるからだ。

 これまで幹部の責任追及は事件への関与を立証し「共同不法行為」の責任を負わせるか、抗争事件を暴力団の事業と見なし幹部の「使用者責任」を問うかの方法が取られてきた。

 下級審判決の中には、昨年10月の大阪高裁判決のように末端組員が起こした射殺事件について暴力団組織のトップ(山口組組長)の使用者責任を認めたものも出てきた。そのためには膨大な立証活動が必要となる。組長の使用者責任そのものについても高裁の判断は分かれている。

 そこで指定暴力団(24団体)同士の対立抗争や組織内部の抗争で組員が凶器を使用し暴力行為を行ったことを立証すれば、被害者はトップに賠償請求ができるというのが改正案である。指定暴力団員は、暴力団員全体の91%を占める。抗争事件の大半は指定暴力団が絡む。抗争を止めることができ、縄張りを守るための抗争で利益を受けるトップに責任を負わせるのは合理的である。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20040109MS3M0901309012004.html