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2004年01月08日(木) 00時00分

原発論文で無断利用朝日新聞・

 原子力技術などの調査研究を手がける財団法人・若狭湾エネルギー研究センター(福井県敦賀市)の研究員が、昨年5月、原発などの住民投票についてホームページで発表した論文で、芦浜原発問題について、紀伊長島町の地元紙記者の著書を無断利用していたことが分かった。研究員は都内の調査会社に文書調査を依頼し、結果をそのまま掲載したという。抗議に対し無断利用を認め、全文を削除した。

 論文はA4判で46ページ分。芦浜原発を巡り、南島町が93年、紀勢町が95年に住民投票条例を制定した経緯のほか、巻原発など11カ所の住民投票の動きが分析してある。このうち芦浜関連の本文3ページの大半と注1カ所は、地元紙の記者で紀伊長島町議でもある北村博司さんの著書「原発を止めた町−三重・芦浜原発三十七年の闘い」(01年発行、現代書館)の関連部分を要約したり、一部主語を変えたりしたものだった。「引用」と明記したのは1カ所だけだった。

 例えば、92年の南島町長選で、条例制定の「密約」があったとする北村さんの記述を要約抜粋して掲載。紀勢町の条例について「賛否をオブラートに包み、あいまいな政治駆け引きの中で生まれた柔らかい条例」と評した北村さんの文章をそのまま使った。

 北村さんがネットで見つけて指摘したところ、研究員は昨年9月24日、電子メールで「ご指摘の通り、『注』部分や本文において、ご著書の内容をなぞったと思われる部分がございました」と謝罪し、論文を削除した。

 研究員は取材に対し、「芦浜について資料や文献が少なく、調査会社に文献の要約を頼んだ。要約は基本的にそのままチェックなしに載せた」と無断利用を認めた。現地調査は全くしておらず、芦浜以外にも調査会社に文書調査を委託した地点があるという。

 北村さんは「公表するなら現場取材を重ねて調査すべきで安易すぎる」と憤る。

 現代書館(東京都)の菊地泰博社長は「ネットは人の目に触れる機会が多い。無断利用を指摘されても消してしまえば済むという考えがまた許せない」と話す。

 同センターの近藤道也所長は「引用の付け方が不十分だった。反省して今後は再発防止に努めたい」と話している。

 同センターは経済産業省と文部科学省の共管で94年設立。02年度、経産省の電源立地推進調整等委託費約1200万円を受け、原子力の広報などにも取り組んでいる。

 芦浜原発は中部電力が63年、南島町と紀勢町にまたがる芦浜地区に計画したが、地元住民が賛否両派に分かれて対立。00年2月、北川正恭知事(当時)が白紙撤回を要請し、中電も断念した。(1/8)

http://mytown.asahi.com/mie/news02.asp?kiji=5468