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2004年01月06日(火) 08時31分

携帯電話、韓国の脱北者と北朝鮮の家族つなぐ 中朝国境朝日新聞

 韓国に亡命した脱北者と、北朝鮮に残る家族。両者をつなぐ連絡手段として携帯電話が重宝されている。南北朝鮮間の正規の国際電話は規制されているが、北朝鮮国内でも中国国境に近い場所ならば、中国の携帯電話が通じることを利用した極秘の通話だ。家族の脱北を促す手段としても使われる。最近は北朝鮮当局の取り締まりが厳しくなったといわれ、脱北者は気をもんでいる。

 中朝国境の町から99年に脱北し、現在はソウルにいる女性(30)は03年8月、約4年ぶりに姉と話した。姉は協力者の家のタンスの中に隠れて通話した。時々、電波が途切れたという。

 「弟が軍隊に行ったのはいつ?」「隣家のおばさんの名前は?」。質問を重ねて姉妹であることを確認すると、お互いに涙声になったという。

 姉は「最低でもおかゆが食べられる。もう餓死する人はいない」と語り、女性は安心した。ただ女性は、最後まで「中国で働いている」とうそをつき通した。北朝鮮にいたころ、知人が韓国に亡命したという話を聞いた。その家族が夜中、行方不明になったことを覚えているからだ。

 中国では携帯電話の普及が進む。中国国家統計局によると、03年10月現在の契約台数は約2億6000万台。複数の脱北者によると00年以後、中朝国境沿いの会寧(フェリョン)、茂山(ムサン)、恵山(ヘサン)、新義州(シニジュ)などにも電波が届くようになった。

 「南北通話」を仲介するのが、中国・延辺朝鮮族自治州で脱北の手引きなどをしている中国人ブローカーだ。ブローカーが様々な手段を使ってプリペイド式携帯電話を北朝鮮国内の協力者に渡しておく。通話依頼があるとその協力者が相手の家に行き、電波が届く国境沿いの町に連れ出す。

 通話料は正規でかける場合よりかなり割高という。女性はブローカーに100万ウォン(約10万円)を送金したという。

 北朝鮮政府の中堅幹部だった40代の男性は昨年、娘と通話に成功し、中国に脱北させた。別の男性(35)はブローカーを通じて北朝鮮国内に携帯電話を送った。定期的に通話し、北朝鮮の現状を仕事のために教えてもらっている。

 北朝鮮にとっては、国外情報の流入や国内情報の流出につながる。当局が取り締まりを強めているという情報もある。脱北者の間では、「電波探知機が導入された」「秘密警察が携帯電話の保持者の把握に動いている」という話が広がっている。

 姉と電話した女性も家族の安全を考え、その後の通話は控えている。女性は「携帯ひとつで世界と話せる時代なのに……。いつになったら家族と堂々と電話できるのか。早く南北が統一して欲しい」とため息をついた。(01/06 08:31)

http://www.asahi.com/international/update/0106/001.html