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2004年01月03日(土) 00時00分

村よ 白山麓恋歌②尾口村 Eメール村民「今季も雪質はいいな。滑りやすいでしょ」。スキーを楽しむEメール村民と談笑する橋本孝一さん=尾口村尾添の白山一里野温泉スキー場で朝日新聞・

いつかここで暮らしたい

  「友人の友人が急性リンパ節白血病でA型RHマイナスの血液を探しています。血液が確保できるまで手術を待っています」

  尾口村役場の観光商工課職員、橋本孝一さん(54)のパソコンにこんなメールが届いた。相手は小松市に住むEメール村民からだった。血液を待っているのは23歳の女性。橋本さんはすぐに、「緊急連絡。血をください。協力できる情報があったら連絡して」のメールを全国のEメール村民に発信した。朝まだ暗い5時前だった。

  2時間後、東京の男性から「知り合いに協力を頼んだ」という最初のメール、その後も次々と返信があった。

  「私も同じ血液型。お役に立てるなら」。「知り合いに該当者がいます」……。地元FMラジオ局の女性アナウンサーもEメール村民だった。生放送中の番組で協力を呼び掛けた。

  20件近いメールが届いた。が、見えないところでもっと多くの、他人の命を応援するメールが飛び交っていた。

  その日の夜7時すぎ、橋本さんの元に「無事見つかりました」という連絡が入った。橋本さんは全員に「心のネットに感銘を受けました。本当にありがとうございました」とメールを打った。

  「住んでいる場所は違うが同じ村民として思いが伝わった」。忘れられない一昨年の年明けの出来事だ。

     ■

  尾口村は、温泉とふたつのスキー場があり、ハーブの里から香り漂う山あいの村だ。歴史ある東二口文弥人形浄瑠璃(でくまわし)も伝わる。

  こんな村にひかれ、インターネットで村民になるEメール村民が今では約3600人になった。村の人口が約700人だからその5倍。幼児から90歳代まで幅広く、米国など海外にも住んでいる人もいる。

     ■

  過疎村のPR担当として99年10月、村の職員になった橋本さんがこの仕掛け人だ。都市の人に村の情報をリアルタイムに提供でき、村へのリピーターをつくることができれば、という思いからだった。「村のことを全国に発信、PRできる」。山崎正夫村長(61)が「Eメール村長」をかってでた。

  Eメール村民に登録すると村民証が発行される。本当の村民だという意識を持ってもらうため村民は、住民登録するのと同じような手続きをして、村民証を直接役場で受け取る。

  これまで村主催の懇親会も10回以上開いてきた。約30人が参加して季節の野菜を食べたり、酒を飲み交わしたりもする。文化祭や運動会など村の行事もある。村民同士がメールアドレスを教え合い、自由な交流も。橋本さんは「村民というよりEメール親類・家族のような存在」という。

村名消えてもずっと村民

  尾口村は来年2月、合併して白山市となる。Eメール村民にとっては心の「村」がなくなる。他人事ではない。

  昨年12月、橋本さんはEメール村民の将来についてアンケートをした。「白山市になってもEメール村民でいたいですか」。回答の多くは「イエス」だった。

  Eメール村民制度については「村の応援をしていると感じる」人が多い。「小さな村が最先端メディアを導入していることに魅力を感じた」(神奈川県の55歳の男性)、「ゴンドラから見えるハーブ畑が好き」(高松町の10歳少女)、「素朴で飾らない村の人たちとの語りも大好き」(金沢市の45歳の女性)……。各地に散らばる村民たちは村の心強い応援団だ。

  村の人口は着実に減る。が、Eメール村民は増え続けている。多くの人が思い浮かべる「村」というイメージに尾口村は合っているのかも知れない。アンケートには「いつか、この村で暮らしたい」と書いた人もいた。

  橋本さんは思う。「村の中に居ると分からないけど、村って、みんなのあこがれの場所なんですね。そんな大切な事をEメールで教わりました。村の名がなくなっても、『Eメール村民』という名は残したい」
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http://mytown.asahi.com/ishikawa/news01.asp?kiji=6308