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2003年12月18日(木) 01時20分

12月18日付・読売社説(1)読売新聞

 [年金改革]「単なる数字のつじつま合わせだ」

 単なる数字のつじつま合わせを、「改革」とは言わない。

 焦眉(しょうび)の急となっていた年金制度改革について、政府・与党が正式案を決めた。

 だが、肝心の中身は、相変わらず現役世代の負担増を軸とした、小手先の調整にとどまった。基礎年金の国庫負担割合引き上げに必要な財源の確保策も明確ではない。

 四年後には、日本は人口減少社会に突入する。数字のつじつま合わせに時間を費やしている余裕はない。政府・与党は今回の“改革案”でお茶を濁すことなく、抜本改革に向けた論議を、直ちにスタートすべきだ。

 焦点となった保険料率の上限は、18・35%に落ち着いた。何とも中途半端な数字となったのは、自民党と公明党、厚生族のメンツが絡んだ、小数点以下の攻防の結果である。前提は、厚生年金の給付水準を現役世代の手取り収入の50%以上を確保する、との与党合意だ。

 老後の安心を保証するのが年金の目的であり、政治が一定の給付水準を約束するのは分かる。だが、現役世代の負担だけで賄おうとするのは間違いだ。保険料を折半する企業の負担も重くなる。

 取りやすいところから取るだけでは、現役世代の理解は得られまい。

 しかも、精緻(せいち)に見える数字だが、出生率や経済の動向が予想をわずかでも下回れば、約束はあっさり反故(ほご)にされる。いわば“仮置き”の数字に過ぎない。

 超高齢社会を乗り切るために、どんな制度を構築すべきか、という本質論を後回しにしたまま、数字を並べ立てても、むなしいだけだ。

 理念を欠いた財源あさりも目立つ。国庫負担割合の引き上げに必要な二兆七千億円の財源の一部を、年金課税の強化で賄うのはいいとしよう。世代間の不公平是正の観点からも、やむを得ない。

 だが、所得税の定率減税の縮減・廃止は、極めて問題だ。サラリーマンの中堅層を狙い撃ちした増税策であり、現役世代の過度な負担を避けるという改革の趣旨に反する。再検討が必要だ。

 一方、財源にふさわしいとされる消費税について、与党の税制改正大綱は「二〇〇七年度をめどに消費税を含む抜本的な税制改革を行う」とした。一歩前進だが、実現の道筋は見えない。具体的な検討に着手し、期限を区切って結論を出すことを、年金法案に明記すべきだ。

 社会保障制度は「国のかたち」そのものだ。政権が交代したら制度が変わるのでは、国民の信頼も得られない。与野党で協議の場を設け、抜本改革の合意を積み重ねていくことも重要である。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031217ig90.htm