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2003年08月28日(木) 07時03分

青い水田、曇る表情 東北3県・コメ「著しい不良」河北新報

 低温と日照不足で水稲の冷害への懸念が現実味を増しつつある。東北農政局が27日発表したコメの作況は青森、岩手、宮城の各県で「著しい不良」。1993年の大冷害の悪夢がよぎる。寒さに強い主力品種ひとめぼれの底力に望みをつなぎ、いもち対策に奔走、収量と品質の確保に懸命の努力を続ける東北の農村を歩いた。

 「いつもなら穂が黄色く色付いている時期なのに、ほら、この通り」。水沢市を中心とする岩手県南の穀倉地帯、胆沢平野。一面真っ青なままの水田を前に、水沢市の農業熊谷太一さん(56)の表情はさえない。
 ひとめぼれの穂は、こうべを垂らし始めてはいるが、一部に実が入らない不稔(ふねん)障害が見られ、生育は「1週間から10日遅れている」(熊谷さん)からだ。

 「今後の天気次第では、不稔と遅延障害のダブルパンチで、2、3割の減収と品質低下は避けられない。残暑の厳しい日が続けばいいのだが」と熊谷さん。一方で「でも、10年前のような大被害にはならないと思う。ひとめぼれはとにかく寒さに強いから…」とも付け加えた。

 「戦後最悪」といわれた93年大冷害時の岩手県の平均の作況指数は30。熊谷さんには当時の記憶が鮮明に残っている。
 奨励品種として岩手県内で91年に栽培が始まったひとめぼれを熊谷さんはいち早く導入した。ササニシキが全盛だった93年には、耕作していた5ヘクタールすべてにひとめぼれを作付けしていた。
 大冷害の秋、周囲のササニシキ農家の10アール当たり収量がわずか2—3俵(120—180キロ)しかなかった中で、熊谷さんは倍以上の6—7俵を収穫。「耐冷品種の威力を思い知った」という。

 ひとめぼれはコシヒカリの“血”を引き、耐冷性はササの「やや弱」に対し、最高ランクの「極強」。93年の大冷害で壊滅的な打撃を受けたササニシキに対し、冷害への強みを発揮したことから、その後、作付面積が拡大した。
 東北農政局によると、東北地方のひとめぼれの2002年作付け割合は28.6%に上り、1位。岩手は約6割、宮城は約7割を占める。この10年で、主力品種は完全にササニシキからひとめぼれに移行した。

 穂を天にかざすと、もみの中にいくつかの実が透けて見えた。「思ったより入っている印象ですね」。27日、古川市に隣接する三本木町内のひとめぼれの圃場。臨時の不稔調査に当たる宮城県古川地域農業改良普及センターの内海章技術主査はつぶやいた。
 この日、内海技術主査は古川市内のササニシキの圃場も調べた。出穂期は両品種ともお盆前で、ほぼ同じ。だが、ほぼ真っすぐ立ったままの稲が目立つササニシキに対し、ひとめぼれは大半の穂がこうべを垂れている。実り具合の違いをうかがわせた。

 ササニシキ、ひとめぼれを生んだ古川市の宮城県古川農業試験場。永野邦明・作物育種部上席主任研究員は「ひとめぼれが主力になっているので10年前のような事態は考えられない。ただ、古川では7月22—24日の3日間、最低気温が14度台で推移した。もし減数分裂期がその時期に重なれば、耐冷性の強いひとめぼれでも厳しい」と話す。

 古川地域農業改良普及センターの田中良所長は「現在の作戦は残ったものをどれだけ実らせるかにシフトしている。水管理や穂いもち防除、病害虫などこれからの技術対策が肝心」と警戒を呼び掛けている。
 冷害との闘いに苦しんできた稲作農家にとって「最強」の品種といえるひとめぼれが今、真価を問われている。
[河北新報 2003年08月28日](河北新報)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030828-00000010-khk-toh