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2003年08月13日(水) 00時00分

手製消化器爆弾事件1カ月朝日新聞・

県警、立件へ本腰 

男の自宅 火薬の製造器具押収


 福井市御幸1丁目の住宅街で先月13日早朝、手製爆弾が爆発し、爆弾を高校時代の同級生の実家横の駐車場に仕掛けようとしていたとみられる同市灯明寺町の無職の男(34)が全身にやけどを負った事件から1カ月が過ぎた。男は病院の集中治療室で手当てを受けていたが、今月上旬、一般病棟に移った。県警は爆発物取締罰則違反の疑いで立件する方針で、男の快復を待って聴取を本格化する。
               (上沢博之、松尾一郎)

●16年後の仕返し

 県警などによると、男は「高校時代にいじめられた仕返しに、爆弾で火をつけようとした」と話し、福井市内に実家がある同級生と丸岡町内の同級生の2人の名前を挙げたという。男は私立高校2年の2学期から不登校となり、3年の1学期末で中退した。16年後の仕返しとの説明に関係者は困惑している。

 高校時代の担任は「いじめがあったとは記憶していない」と話す。狙われた同級生も「からかったことぐらいはあったかもしれないが、覚えていない」と言う。中学、高校時代の関係者は、男の印象について「おとなしい」「目立たない」と振り返る。

 中退後、男は父親の仕事を手伝ったが長続きせず、実家にこもりがちだったという。10年前に母親が死去した後は、家族ともほとんど話をしなかったという。

 京都女子大の野田正彰教授(精神病理学)は「社会に戻れない苦しさを抱え、引きこもる人の中には、過去の恨みを繰り返し思い出して膨らませ、執着していくタイプがいる。心理的には、相手を攻撃する一方で、自分の人生にあきらめを抱き、自己破滅を望む傾向にある」と話す。


●周到な準備

 男は、実家を出た同級生が今どこにいるのかを調べるため、車のナンバーから住所を照会したり、県外の電話帳や地図を取り寄せたりしていたという。

 手製爆弾は男が借りていたレンタカーや自宅から計8個押収された。男がつくっていた手製爆弾について、軍事評論家の神浦元彰さんは「爆弾作りへの執念が感じられる」と指摘する。駐車場で男が誤爆した消火器爆弾の起爆装置は、時限式と振動感知式の併用で構造が複雑な珍しい型という。男は、第2種電気工事士の免許ももっており、爆弾のつくり方をインターネットや雑誌などで調べていたらしい。

 県警は、男の自宅から、花火のほか、黒色火薬の原料となる農薬や木炭、すり鉢など火薬の製造に必要な器具を押収した。火薬そのものも自作していた可能性があるという。自宅内には失火の跡も残っていた。

 神浦さんは「手製爆弾は、花火から取り出した火薬が使われるケースが多いが、一度にたくさんとれない。しかし火薬も手作りするとなると大量に用意できる。大きな破壊力を望んだのではないか」と言う。


●生活の行き詰まり

 事件の要因を男の生活の行き詰まりと関連付ける見方もある。家族によると、男は母親の死後、父親から譲り受けた400万円を取り崩しながら生活していたらしく、残金はわずかだったとみられる。父親や弟が家を出て、男は事件の約1カ月前から一人暮らしだったが、その自宅が競売にかけられ退去を余儀なくされていた。事件は不動産会社が男の退去期限としていた日の翌日に起きた。

 退去期限の日の夕方、男は市内でレンタカーを借りた。男はその夜、父親に電話し、退去について「なんとかならないか」と相談してきた。父親は「どうにもならん」と答えた。男は翌朝、レンタカーの荷台に手製爆弾を積んで同級生の実家に向かったとみられる。(8/13)

http://mytown.asahi.com/fukui/news02.asp?kiji=2982