悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2003年08月01日(金) 00時00分

神栖・ヒ素汚染 毒ガスの波紋<上> 治まらぬ住民の悩み 遠い原因究明 東京新聞

 神栖町木崎の飲用井戸でヒ素が検出されてから四カ月以上がたった。その間、汚染物質が自然界に存在しない有機ヒ素化合物と判明。旧日本軍の毒ガスに由来する汚染の可能性が高いとされ、国が原因究明と被害者救済に乗り出した。だが、いまだに原因は特定できず、健康被害を受けた住民の悩みも治まらない。地下から突如出現し、平穏な住宅街を襲った「毒ガス」の波紋を追った。

◆調査は空振り◆

 「見つかるまでは不安だ。何でもいいから早くやってほしい」。最初に水質基準値の四百五十倍のヒ素が検出された井戸(A井戸)を利用して健康被害を受けた住民でつくる「ヒ素汚染による健康被害者の会」の小沢浩代表(38)は訴える。

 環境省は五月下旬から七月上旬まで、原因究明のため、A井戸の周囲十メートル四方を調査した。地下十五メートルまで二十五本のボーリング調査を行い、地下水や土壌を分析したが、汚染源は見つからなかった。

 同省は今回の結果から、A井戸の地下十五、六メートルで数メートル四方の範囲内に、地下水流とは別の汚染水の固まりか汚染源があると推定。一日から第二次調査に取り掛かり、汚染源の場所の絞り込みを目指すが、時間的なめどは全く立っていない。

◆周辺との関連◆

 一九九九年一月、A井戸から西に約四百メートルの企業の井戸水から、基準値の四十五倍のヒ素が検出された。住民や周辺井戸に問題がなかったため、そのまま閉鎖されたが、現在ではヒ素汚染とみられている。九八年七月の検査で異常がなかったことから、汚染はこの半年間に始まったと考えられる。

 さらに西に約六百メートル離れた地区(B地区)では今年、十数本の井戸から基準値の十四−四十三倍のヒ素が検出され、有機ヒ素化合物も含まれていた。九九年に住民に健康被害の症状が出ていたことも分かっている。

 環境省はA井戸周辺の調査結果を踏まえながら、八−九月にB地区の調査を始める予定だ。地元からはB地区をA井戸の汚染源とする説、全く別の汚染とする説が出ており、並行した調査が全容解明には欠かせない。

◆補償はいつ?◆

 「国はいつも責任を認めない。何か得るものがあるかと思って来るけど、毎回ガッカリして帰る」。A井戸で健康被害を受けた主婦(50)は先月二十九日、神栖町で開かれた環境省の住民説明会に参加した後、吐き捨てるように言った。

 同省は「まだ旧軍の毒ガス由来という確証が得られたわけではない。原因がはっきりしないと、責任・補償は決まっていかない」という立場を崩さない。「救済」ではなく「補償」を求める被害住民との話し合いは常に平行線をたどる。

 別の被害者の主婦(26)は「原因が見つからなかったら、私たちは泣き寝入りなんですか」と憤りを隠さない。原因究明のめどが立たない以上、住民の不安が解消される日もまた遠い。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/ibg/20030801/lcl_____ibg_____000.shtml