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2003年07月18日(金) 00時00分

私大前納金 返すのは当然だが… 東京新聞

 私立大学を相手取った前納金返還訴訟で、京都地裁は「入学金も返せ」との初の判断を示した。私大は、入学辞退者の前納金を当てにした財務体質を、早急に改めなければならない。

 私大側が困惑しているのは、判決が四月一日より前に入学を辞退した受験生について、授業料などに加え入学金も返せ、と命じている点だ。

 最近の傾向として、授業料は返還するのが全国的な流れになっているが、入学金については「予約金的な意味が含まれる」との理由から、ほとんどの私大が返還の対象に含めていない。

 同様の返還訴訟は、東京や名古屋、大阪などの裁判所で、約百二十校を相手取って争われており、これら訴訟への波及は必至だ。

 判決の根拠となったのは、二〇〇一年四月から施行された消費者契約法だ。私大側を事業者、受験生側を消費者ととらえ、入学金の返還に応じないのは、不当な違約金の徴収に当たる、と判断した。

 受験生やその父母側に立って消費者契約法を持ちだすまでもなく、一般常識として入学していないのだから入学金を返すのは当たり前だ。

 大学側にも言い分はある。合格判定には、一人ひとりに手間がかかっている。四月一日直前に大量の辞退者が出れば、追加合格や再募集の措置も取らなければならなくなる。それには相応の費用がかかる。

 新たな問題も浮上してこよう。四月一日より前に入学を辞退すれば、授業料のほか入学金も返ってくる、となれば、すべり止めの大学をいくつも受ける受験生が出てくるだろう。合格者の歩留まり率は、一段と読めなくなる。大学側にとってはゆゆしき事態だ。

 もちろん、経営面でのマイナスも大きい。私大の収入のうち納付金が占める割合は七割強、とされる。辞退者の前納金はその一部だが、十八歳人口の減少でただでさえ経営状態の思わしくない私大が増えている。「入学金も返還」との流れが定着すれば、私大の財務状況はさらに圧迫される。

 加えて来年度からは国立大が法人化される。既に民間の経営手法を取り入れる準備が着々と進められてきた。親方日の丸的な体質から脱皮する国立大は、私大にとっても受験生の獲得などで、これまでとは比べものにならない脅威となるはずだ。

 払う側ともらう側では当然、意見は異なる。私大は辞退した受験生の前納金を当てにしないでもすむ財務体制を確立する好機、とこの判決をとらえたい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20030718/col_____sha_____002.shtml