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2003年07月17日(木) 23時37分

新電電5社提訴:総務省のNTT傾斜に「イエローカード」毎日新聞


 NTTの接続料値上げ問題は、17日の新電電5社の提訴で、規制色の強い通信業界で、事業者が初めて監督官庁を法廷に引きずり出す事態に発展した。新電電5社のある首脳は、今回の提訴について、「新電電育成の立場だったのにNTT寄りに舵を切った総務省と、NTTへのイエローカードだ」と説明する。底流には通信市場の地殻変動もある。提訴の狙いと背景、電話料金への波及を探った。

 <政策転換>

 「接続料値上げは政策の根幹を揺るがす」(小野寺正KDDI社長)。提訴後の会見で、5社の社長はそろって、総務省による競争促進政策からの「政策転換」(白石智パワードコム社長)への危惧を強調した。

 同省が、NTTの独占する市内回線網の開放を促す政策のテコにしたのが、接続料の値下げだった。02年の中継交換機接続料は、94年の4分の1に下がった。これを追い風に、KDDIなどが通話料金を引き下げ、NTTが追随する形で、値下げが続いてきた。それだけに、接続料の値上げ認可は新電電に、行政のNTT傾斜と映る。

 <政治介入>

 軌道修正の引き金になったのは、昨年11月末の衆参総務委員会の決議。「通話料に地域格差が生じないよう、NTT東西間の接続料均一を維持する」よう求めた。接続料を経済基盤をベースに東西個別に計算すれば、コスト高のNTT西は上がり、NTT東は下がる。このため、情報通信審議会(総務相の諮問機関)は「東西個別の接続料金設定」(02年9月)を求めていたが、決議はそれを阻止するのが狙いだった。西日本の自治体や経済界に接続料の東西別料金に対する危機感が噴出したことも決議を後押しする力になった。

 結局、同審議会も方向転換し、今年2月には「社会的合意が不十分」として、東西均一の接続料維持を認めた。

 <NTTへのけん制>

 背景には、携帯電話やADSL(非対称デジタル加入者線)の普及に伴い、NTT固定電話網の通信量が大幅な減少を続けている通信市場の地殻変動がある。右肩上がりを続けてきたNTTの通信量は01年に入って減り始め、02年春以降は前年比2割近い減少が続く。総務省の認可には、固定電話網の全国サービスを義務付けたNTTへの配慮がうかがえる。

 だが、新電電側が最も恐れるのは、NTTの政治力が強まることだ。NTT出身議員が活発に動き、参院総務委員会が5月に「NTTの光ファイバー規制の再検討」を決議した。衆院では不発に終わったものの、総務省の規制から逃れたいとのNTTの悲願が込められていた。新電電は、NTTが、政治の助けを借りて収益基盤を強化するとともに、規制のくびきからも自由になろうとしていることを強く警戒している。 【池畠恵治】

 ◆「料金転嫁はしない」 提訴後の会見で表明

 接続料値上げに伴う新電電各社の負担増は、接続方式によって左右されるが、新電電5社は17日の提訴後の会見で、「料金に転嫁する意図はない」(ウィリアム・モロー日本テレコム社長)と述べ、当面は経営効率化努力に全力をあげる考えを示した。

 電話局から利用者を結ぶNTTの電話回線(地域通信網)を、新電電が使うには、都道府県ごとにある中継交換機(ZC)接続と、利用者により近い加入者交換機(GC)接続の2種類の方式がある。総務省が認可した接続料は、ZC経由を約12%引き上げ3分当たり5.36円、GC経由は逆に約3%引き下げ同4.37円にし、加重平均で約5%の値上げになる。

 日本テレコムは中継交換機(ZC)接続と加入者交換機(GC)接続が3対1の割合で、約60億円の負担増を予想。KDDIは、02年度連結ベースで約1200億円の接続料が、数十億円増えると説明した。ZC接続が100%のフュージョン・コミュニケーションズは、15〜16億円の負担増で「値上がり率は一番大きい」という。 【伊藤一博】

 ◆米USTRは静観の構え

 【ワシントン竹川正記】NTTの回線接続料問題で、新電電5社が17日、総務省を提訴したことについて、米通商代表部(USTR)は静観する構えだ。同問題ではすでに2国間協議で今回の接続料値上げは認める代わりに「2年後の接続料改定時には、接続料算定方式を含む料金のあり方を抜本的に見直すことで合意済み」のためだ。

 5月にテキサスで行われた日米首脳会談に提出された日米の規制改革と競争政策に関する報告書にもこの方針が明記されており、米政府としては「現時点では動き様がない」(関係筋)。NTT東西会社の回線接続料値上げを米側が受け入れた背景には、日本が米国の対イラク戦争を支持したことへの外交的配慮があったと言われている。

[毎日新聞7月17日] ( 2003-07-17-23:37 )


http://www.mainichi.co.jp/news/flash/keizai/20030718k0000m020176000c.html