悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2003年07月16日(水) 00時00分

発信者よ 責任者たれ 少年犯罪 顔写真のネット流出  東京新聞

 少年犯罪が起きるたびにインターネットなどを通じ、犯人の顔写真や名前と称する怪しい情報が飛び交う。長崎市の男児誘拐殺人事件でも、ねずみ算的に全国レベルで広がった。人権侵害であることは明白で、事件の真相究明にも悪影響を及ぼしかねない。ネットにはびこる“二次犯罪”はなぜ規制できないのか。

 ■削除作業 いたちごっこ

 長崎市の事件をめぐっては、ネットのほか携帯電話のメール上でも補導された少年とされる写真が複数出回った。いずれも別人とみられる。

 法務省人権擁護局の担当者は「東京法務局と福岡法務局、長崎地方法務局の担当部署が、お互いに連絡を取りながら対処している」と話した上で、法的な解釈を説明する。

 「法律的には名誉棄損にあたるだろうが、なによりも重大な人権侵害であることは明らかで、人権擁護の観点から削除を依頼している」

 今回も三法務局から、少年とされる名前が書き込まれたインターネットの掲示板運営者に削除の要請をした。

 だが「これまでに約五百件の書き込みについて、削除を依頼した。一回につき、数十件の依頼をすることもあった。運営者サイドからは『依頼について対処している』という返事はもらっているが、次から次へと書き込まれるので、いたちごっこ状態だ」と言う。

 さらに事件以後、担当部署では「掲示板を定期的にチェックするのが『仕事』になってしまっている」と嘆く。

 ■携帯メールも打つ手無し

 携帯電話のメールについても担当者は「手の打ちようがない」と言いながら訴える。「掲示板も携帯電話も、結局は個々のモラルの問題だ。今後はポスターなどでの啓発活動も必要かもしれない」

 インターネットに関する法的問題に詳しい速水幹由弁護士は「インターネットは、第三者チェックを受けずに全世界に情報を自由に発信できる。これは人類の歴史始まって以来だ。例えば電話という通信手段が登場して、身代金目的誘拐犯罪が増えたが、だからといって電話をなくしてしまえとはならない。それと同じで、自由な情報発信ができるインターネットもその恩恵は大きい」と存在意義をまず強調する。

 ■プロバイダーの自主判断に限界

 だが今回のような人権侵害は深刻な問題だ。「現在、情報の善しあしを含めプロバイダー(ネット運営者)がその判断や責任を問われている。ただ過去の判例を見ると司法判断でさえ揺れているのに、民間がその判断をするには限度がある。それは第三者機関でやるべきだ」と現在の規制の限界を指摘する。

 同時に「責任を詰めると、プロバイダーはトラブルへの怖さから何でも規制するようになる。それにあるプロバイダーで規制しても、別のプロバイダーで発信する。場当たり的にプロバイダーの段階で規制をかけることは解決にならない」と規制の方向性への疑問を投げかける。

 ■通信記録保存し発信元の特定を

 その上でインターネットの良さを失わないで規制する方法として速水弁護士は「ログ(通信記録)をプロバイダーが保存する。そうすれば捜査機関がそれをたどり発信者を特定できる。発信者が匿名性の陰に隠れて無責任な発言をしていることが問題で、発信者は発言の自己責任を問われるのは、バーチャルな世界でも当たり前だ。無責任な発言をすれば、発信者は責任を問われるとなれば、抑止力になる」と提案した。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030716/mng_____tokuho__000.shtml