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2003年07月11日(金) 17時32分

日本やアジア諸国で、カメラ付き携帯による「電子万引き」や盗撮が増加WIRED

 東京発——これは避けられない事態だったのかもしれない。超小型デジタルカメラがついた携帯電話端末がアジア中に広まった結果、新手の迷惑行為が生まれたのだ。

 女性のスカートの中やトイレの個室を盗撮する者もいれば、本や雑誌の見たいページの写真を撮り、買わないで済ます者もいる。

 携帯電話文化に詳しい慶応大学の伊藤瑞子助教授は、次のように述べている。「新しい技術にまつわる問題は、適切な行動についての社会的共通理解の確立が追いつかないことだ。問題となる技術が何であれ、マナーをわきまえない人は必ず出てくるだろう」

 カメラ付き携帯電話が一般の人の手に入るようになって数ヵ月しか経っていない米国に対し、高機能携帯電話端末の分野で世界をリードする日本では、2500万台以上のカメラ付き携帯電話が出回っている。

 日本の隣国、韓国でも、カメラ付き携帯の流通量は300万台にのぼるとみられる。韓国のサムスン電子社は、産業スパイ防止の目的で、半導体および研究開発に関する施設でのカメラ付き携帯電話の使用を禁止している。

 携帯電話のトップメーカーであるサムスン電子社にしては、禁止の手法はローテク極まりない——従業員や来客に対し、携帯電話端末のカメラのレンズにテープを貼るよう義務付けるというものだ。

 また、「デジタル万引き」の問題も懸念されている。

 社団法人日本雑誌協会は、書店の利用客に対し、雑誌を買わずにカメラ付き携帯電話でページを撮影するといった行為を慎むよう呼びかけるポスターを3万4000枚作成し、全国の書店に送付した。

 個人使用を目的とし、他人に配布しない限り、書店に陳列してある雑誌の写真を撮るだけでは、日本の法律では著作権侵害とはみなされない。

 しかし、書店側は、こうした行為が売上に深刻な影響を与えていると主張する。

 東京で八雲堂書店を営む新倉信氏は、「ただでさえ厳しいご時世だ。そのうえに突然、こんな問題がふりかかってくるとは」と嘆いている。八雲堂書店の店先には「マガ人(じん)はマナーを守る」と呼びかける日本雑誌協会のポスターが掲げられている。

 ある32歳の主婦は、子どもの写真を撮るのにカメラ付き携帯電話を使っている。彼女は、書店でこっそり誌面を撮影している人を見かけて、自分もやってみたいと思ったことがあると明かす。

 「気持ちはわかります。でも自分ではしないでしょう」とこの主婦は話している。

 カメラ付き携帯電話には、画質の劣るタダ同然のものから、デジタルカメラと同等の画質の写真——サイズは小さいが——を撮影できる3万円近いものまで、さまざまな機種がある。

 今のところ、カメラ付き携帯電話で撮影した写真で雑誌のページ全体を読むのは、たとえ写真をパソコンに転送したとしても不可能だ。だが、飲食店の所在地、求人情報、料理のレシピ、アイドルの写真などを撮影するのであれば、現在の技術で十分だ。

 カメラ付き携帯電話を規制しようとしている政府は、アジアの中ではまだない。また、韓国のLG電子社によれば、同国の携帯電話メーカーは政府に対し、売上に打撃を与えるいかなる規制にも反対するとの書簡を送ったという。LG電子社は、この書簡を送った業界団体のメンバーでもある。

 カメラ付き携帯電話の使用目的は、スナップ写真を添えたにぎやかなメールをやりとりするといった、他愛のないものがほとんどだ。だが、悪用される事例も出てきている。

 アジアの国々では、水泳プールや更衣室などで盗撮への不安が増大している。日本の公衆浴場の中には、携帯電話の持ち込みを禁止しているところもある。

 日本でも、カメラ付き携帯電話を使って、混雑した電車や店の中で女性のスカートの中を盗撮した者が警察に逮捕されている。中には、約4200ドル相当の罰金を課せられた犯人もいる。

 中国では、10代の女性が男にカメラ付き携帯電話で裸を撮影され、写真をばらまくと脅された上にレイプされるという事件があったと、警察が公表している。また、ある女性は、カメラ付き携帯電話でトイレに入っている別の女性の写真を撮り、知り合いに転送したとして訴えられている。

 日本のカメラ付き携帯電話は、シャッターを押したときに電子音を発し、周囲の人に撮影を警告する仕組みになっている。だが、警察によると、スピーカーに手や布をかぶせれば音をさえぎることも可能だという。

 しかしその一方で、カメラ付き携帯電話は防犯目的に使うこともできる。

 横浜では、小売店に勤める18歳の女性が、カメラ付き携帯電話で通勤電車の中で自分に痴漢行為をした38歳の男の写真を撮影した。彼女は電車の中から警察に通報し、カメラ付き携帯電話の写真を証拠として提示した。男は次の停車駅で逮捕されている。

 横浜国立大学教育人間科学部の岡部大介氏は、携帯電話に関するルールは、強制されるのではなく、ユーザー自身が生み出していくべきだと述べている。

 「モバイル技術は社会のマナーを変え、社会のマナーが新しいモバイル技術につながる。互いに影響し合う関係なのだ」と岡部氏は語った。

[日本語版:長谷 睦/高森郁哉]日本語版関連記事

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