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2003年07月09日(水) 15時01分

PtoPで「匿名」はありえるのか??CNET Japan

 違法ファイル交換の横行するPtoPネットワークに対して厳しい目が向けられるなか、「身分をあかさずに音楽ファイルなどを共有したい」と考えるユーザーは今、難しい選択を迫られている。

 KaZaAなど人気の高いPtoPネットワークでは、音楽ファイルなどのファイル交換がオンライン上で行われている。専門家は、「完全な匿名を希望する利用者は、PtoPの利便性とユーザビリティにおいて、大きな犠牲を払わなければならない」と警告する。

 音楽業界の委託を受けて、PtoPネットワークを調査している米MediaDefenderプレジデントのRandy Saafは、「そもそも身分を隠蔽するようなシステムは存在しない」と語る。「コンテンツを共有する場合、リソースを他人に開放するリスクを負うことになる。大規模な公共ネットワークで利用者を匿名化するのは困難だ」(Saaf)

 PtoPに吹きつける逆風も、ウェブ利用者が身分を隠そうとする原因になっている。米レコード協会(RIAA)は最近、著作権侵害行為を犯した個人を告訴する考えを明らかにしており、さらには米Verizon CommunicationsにKaZaAユーザーの身分開示を求めた裁判所命令を勝ち取っている。すでに、RIAAは4人の大学生を告訴しており、大学によっては不法なファイル交換を行った学生を処罰する事態になっている。

 しかし、米Groksterのプレジデント、Wayne Rossoは、「RIAAの脅しは、今のところ影響はない」、と語る。「実際のところ、誰も気にかけちゃいない。Groksterのダウンロード数は増加しているし、トラフィックにも変化がない。大体、6000万人もいるユーザーを訴えるなんて、現実味がなさすぎる」(Rosso)

 PtoPのファイル交換システムで身分を隠せない理由は簡単だ。PtoPネットワークは効率性を考慮して開発されたもので、匿名性を狙ったものではないからだ。IPアドレスで所在の明らかなパソコン同士をつないでファイルをやり取りするというPtoPの仕組みは、単なるファイル交換においては非情なまでに効率的だ。しかし、共有フォルダのコンテンツをブロードキャスト配信するとなると、身分開示による被害を受けやすく、ひいては裁判の対象になりかねない。

 さらに、PtoPネットワークで使用するIPアドレスは、同じ番号は存在しない。またファイル転送はPtoP、つまりルーターなどの中継機を介さずに直接やりとりされる。このため、PtoPネットワークでは、IPアドレスを辿ることでISP、企業、大学などの利用場所を突き止めることができるのだ。

 通常、著作権保有者はデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づき、該当するIPアドレスが属するネットワークの企業や大学に召喚状を送付し、著作権侵害の疑いがある人物の身分開示を要求することができる。身元が判明した場合、著作権保有者は訴訟手続きまたは停止命令送付のいずれかを選択できるようになっている。

 これまで、ウェブ閲覧や電子メールでプライバシーを保護するツールが出されていたものの、その大半は消費者から相手にされなかった。しかし、RIAAが個人を告訴する意向を示していることから、PtoPネットワークで匿名化を実現するツールが復活する可能性がある。

 個人のプライバシーを完全に保護するソフトウェアが幅広く普及するとしたら、匿名技術への関心が急激に高まり、ネットの本質を大きく変えるかもしれない。

 すでに一部の企業は、ファイル交換者に対する訴訟や刑事訴追を視野に入れたソフトウェアを提供し始めている。例えば、Blubsterと名付けられたPtoPサービスでは、「ユーザーが匿名のプライベートアカウントを利用できるネットワーク」をうたったソフトウェア最新版を先週発表している。

 ただし、利用者が望み通り「PtoPネットワークで、痛手を被らずに匿名を名乗る」ことは難しそうだ。例えばBlubsterは、ファイル交換サービスへの接続に使用したIPアドレスそのものは隠さないので、調査をすれば身元が判明することになる。

 RIAA広報担当者のJonathan Lamyは、PtoPネットワーク上で著作権侵害行為を調査する手段については言及を避けたものの、「Blubsterのようなサービスは、提供する会社が刑事責任を負うだけでなく、これを利用したユーザーも、民事責任に加えて刑事責任を問われることになる」と語っている。

 身分を隠したいファイル交換者にとっては、八方塞がりに見えるが、方法が全くないわけではない。

 専門家は、ファイルダウンロード時に合法的に匿名を名乗る方法として、「802.11 Wi-Fiの無償アクセスポイントを利用すること」を挙げている。このアクセスポイントではパスワードや加入手続きが不要なため、身分を明かすことなく無線ネットワークにアクセスできる。この結果、利用者の割り出しが困難になる仕組みだ。

 無線アクセスポイントの数は増加の一途を辿っており、無線LANの標準規格である802.11は、より高速な802.11gがIEEE(米国電気電子学会)で標準として正式承認され、注目度がかなり高まっている。

 Saafは「このような無償アクセスポイントを利用する方法は、確かに匿名化には有効だ」としたものの、「わざわざ自宅を出て、無線LANアクセスを提供している店舗にノートパソコンを持ち込なければならない。そんな面倒な手段は定着しないだろう」と付け加えている。

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この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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