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2003年07月07日(月) 00時00分

経産省主催『ハッカー甲子園』に疑問の声  10代に“犯罪まがい”の手口を学ばせても 東京新聞

 コンピューターのセキュリティー(防御)技術者の育成を狙って、経済産業省は八月、十代の高校生らを対象に初の「セキュリティ甲子園」を開く。しかし、役所サイドの思惑とは裏腹に専門家からは、大会の効果への疑問や、逆効果を指摘する声も上がる。

 大会は通称「ハッカー甲子園」。対象は全国の高校や専門学校、高専の学生で、事前審査で選んだ一組三人以下の約十チームが、用意されたネットワークを使って、お互いのサーバーへの侵入と防御を競い合う。

 ■優秀な技術者の育成が狙いだが

 今年、米国で六十八カ国、千三百二十九大学が参加して開かれた「国際大学対抗プログラミングコンテスト」では、一位のワルシャワ大学(ポーランド)以下、十位までは、ロシア、スロバキア、中国などの大学に占められ、日本では東大が十一位に食い込んだものの、旧共産圏などの圧倒的な強さを見せつけられた。

 今回の大会では、優秀な防御プログラムを作れる若い技術者を国として育てる狙いがあるという。

 国内でのこの種の競技会は、民間主催で大人を対象にした形では前例がある。だが、より盛んなのは米国だ。米国では、ヤフー社など電子商取引の大手企業がハッカー(正確には「クラッカー」)の攻撃に頭を痛めている。このため、その防御を担うコンピューターセキュリティー会社が開発した新システムの「性能」をPRするため、賞金付きでハッカーたちにシステム破りを挑ませている。

 今回の「セキュリティ甲子園」を専門家たちはどう評価しているだろうか。

 「高校生たちに犯罪につながりかねない技術を競わせることは、倫理的にいかがなものか」と批判的なのは、三十代後半のセキュリティー技術に携わる研究者だ。

 「私も自ら電子商取引に申し込み、横取りできるかどうか、安全性を試すことがある。これなら法に触れない。しかし、法やモラルに疎い若い世代に、犯罪と紙一重の技術を競い合わせることには疑問がある」

 ■防御と攻撃ではセンス全く違う

 さらにこの研究者は「大会を企画した側に根本的な勘違いがあるのではないか」と指摘する。

 「セキュリティー技術の開発と、それを破ることは、試験問題を作ることと、解くことぐらいの違いがある。防御を破るには過去開発された侵入ツール(道具)のどれを選ぶのか、というオペレーター(運用者)としてのセンスは要求されるが、そのことと防御技術を編み出すプログラマー(開発者)の育成とはまったく別物」

 「現実に不正侵入を防ぐには、技術よりも防御を担うオペレーターの仕事への熱意といったアナログ面が最も重要。今回の大会は運用面を競い合うことになるが、役所が技術開発を意図しているのなら、どうにも素人の勘違いが前提になっているように感じる」

 ■受験が妨げになる説もあるが

 一方、受験競争の激しい日本では、プログラム開発に不可欠な若い頭脳の育成の時期と、受験勉強の時期とが重なり、障害になっているとの指摘もある。この大会には、そうした状況に風穴をあけたいとの期待も込められているようだ。

 だが、「パソコン『超』仕事法」などの著作がある青山学院大の野口悠紀雄教授(経済工学)は、「IT教育なんてする必要がない」と、その期待をあっさりと退ける。

 ■本当に必要なのは英・数の基礎知識

 「技術革新の流れが非常に速いため、あまり意味がない。それより大切なのは英語や数学の基礎知識だ。これらは何十年も使える。IT世界の標準語は英語で、英語が弱いために日本は世界レベルから脱落している。さらに深刻なのは優秀な開発者を受け入れる企業が日本には少ないこと。政府が取り組むべき課題はむしろ、こっちではないか」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030707/mng_____tokuho__000.shtml