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2003年07月03日(木) 00時00分

砲弾も飛び交う ネットオークション事情 海外では無人島や企業まで 東京新聞

 怪しいスジまで含めれば、ないものはないとまでいわれるネットオークション。静岡県裾野市の宅配物爆発事件では、砲弾までネット上を飛び交った。オークション管理者側は監視を強めているものの、「こんな物まで」といわれるものが、ネット上を行き来する。海外では、島や会社まで売買されるという、ネット事情とは−。

 ■需要多いミリタリーグッズ

 今回の事件では、容疑者宅から五百発以上の砲弾などが押収された。ネット販売がどの程度の規模だったかは不明だが、国際軍事評論家のガブリエル中森氏は「砲弾が店舗で売られているのは、沖縄の米軍基地周辺や自衛隊演習場近くの店舗だけ。遠隔地のマニアはネットで手に入れる例が多い」と解説する。

 では、今回の砲弾類の人気度はどうなのだろう。軍事ジャーナリストの神浦元彰氏は「爆薬の入っていない演習弾だと思って売ったのが、たまたま実弾だっただけで、マニアに実弾を欲しがる人はいない」と断言する。「演習弾とは塗料で区別できるが、今回の砲弾は古くて塗料の色が識別できなかったのだろう。不発弾は発射の衝撃で安全装置が解除される場合が多く、今回のように爆発事故が起こりやすい」

 ■105ミリりゅう砲弾1発40万円で

 軍事マニアにはどんな“商品”が人気なのか。中森氏は「マニアも細分化されていて、旧日本軍や米軍、自衛隊関係と分かれ、軍用ブーツ専門もいれば、Tシャツコレクターもいる。砲弾マニアも自分の持っていない種類を欲しがるので、品薄品は高値になる。今回爆発した四〇ミリグレネード弾も手ごろな卓上文鎮として人気が高い」。神浦氏も「一〇五ミリりゅう砲弾は一発四十万円で売られたこともある」と話す。雑誌「コンバット・マガジン」編集部によると、映画やテレビゲームの影響で、主人公の服装や武器が人気を呼ぶ傾向もあるという。

 自衛隊演習場が砲弾類の流出場所になったが、防衛庁陸幕広報は「毎週末と月末、弾着地で清掃をしており、地表に出ている砲弾や薬きょうはすべて回収している」と説明する。しかし、地下に埋もれ、回収し残した砲弾類をマニアが持ち帰ることは可能だ。

 神浦氏は「フェンスがあるところでも、マニアは“自分専用穴”を確保している。夜間に穴から忍び込み、丁寧に復元して帰るのでばれない」と内情を語る。

 一方、国外から持ち込まれる例も多いようだ。戦場に出かけた人が記念品として持ち帰る例も絶えないという。中森氏は「イラク戦争でも、手りゅう弾、ロケット砲の砲弾などを国内に持ち帰った知人が多数いる」と打ち明ける。「火薬の入っていない砲弾類は鉄くず扱いで、税関を通過できる場合が多い。カンボジアPKOの時も、対人地雷が土産用灰皿として売られ国内にも多数持ち込まれた」

 インターネットジャーナリストの森一矢氏も「ネットオークションは何でもアリだが、ミリタリーグッズは、特に需要も多い」と説明する。

 軍用品では、米軍の救急箱や地図を入れる袋などの小物も多いが、軍服や使用済みの手りゅう弾、ライフルの弾などは“定番”だという。「以前は店によってかなり値段の差があったが、オークションが普及してからは、適正な価格で安定した」と指摘する。

 ■山口組関連グッズも

 ネットではほかにどんなものが飛び交っているのか。

 森氏は「最近では、皇室グッズが注目を集めている。皇室施設通行許可証や菊の御紋が入ったたばこなど。指定暴力団山口組のバッジも高値で取引されていた。山口組関連グッズは意外に多くて、名刺や印籠(いんろう)のようなカードなどは数万円単位で値がついていた。本物かどうかは不明だが、携帯ストラップも出ていた」と説明する。

 何げない出品に見えて意外な裏があるケースもあるという。「コンサートのスタッフジャンパーが出たときには、価格が高騰した。単なるファンが買うのではない。アーティストによっては、同じジャンパーを使うこともあるので、会場や立ち入り禁止エリアに出入りするのが狙いだ」

 製造・販売が禁止されている飛び出しナイフも「デザインナイフ」として出品されているという。「マニアはすぐ分かる」とも。

 森氏は「主催者側のチェックが厳しくなかった三年ほど前までは、とんでもない出物が頻繁にあった」と指摘する。

 ■「不用品を出すフリマの感覚」

 過去には「本物」とうたった旧ソ連製の銃や、警察官が使う手錠、特殊警棒、自衛隊が支給する缶詰「しいたけ飯ハンバーグセット」などの出物も。珍しいところでは、オウム真理教のヘッドギアや、運転免許証、記者用の腕章、議員バッジなどもあった。

 森氏は「オークションの伝統がある欧米では、ネットオークションも、高価な品物を安く手に入れるという感覚がある。日本は、不用品を出すフリーマーケットに近い」と説明する。

 米大手のオークションサイト「イーベイ」では、出品カテゴリーの上位に絵画やアンティーク、船舶などの高級品が並ぶ。「無人島なども頻繁に出ている」

 検索サイト「オールアバウトジャパン」で、「韓国インターネット事情」を執筆しているソウル在住の竹井弘樹氏は「韓国では米国のイーベイ傘下の『オークション』が八割を占める。日本より盛んで、企業間の取引もネットオークションで行われている」と説明する。詐欺などが問題になることはあるが、韓国の場合は、オークションに参加するためには住民番号と実名を登録しなければならないという。「抜け道がないわけではないが、実名での取引になるため、違法な行為はある程度制限されている」と話した。

 ■「使用済み弾丸」新たな禁止物に

 今回、砲弾が取引された大手オークションサイトを管理する「ヤフー・ジャパン」では、あらかじめオークションの出品禁止物を例示しているが、事件を受けて新たに「使用済みの弾丸」を書き加えた。

 同社では「使用済みの砲弾の取引は法に触れるわけではないが、素人が不用意に扱う危険性も高いので」と説明した。

 そもそも盗品や銃器など違法な品物や、たばこや酒など販売免許が必要なものは禁止している。今年五月末の時点で出品数は三百九十二万点に上ったという。「ほとんどは問題のない品物だが、悪質なケースは直ちに削除している。ユーザーが『出品禁止物ではないのか』と教えてくれるケースが多い」

 同社では今回の事件を機に出品物のチェックはさらに強化せざるを得ないとする。しかし、「本物か偽物か分からないグレーゾーンは多いんですが…」と話した。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030703/mng_____tokuho__000.shtml