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2003年07月02日(水) 18時12分

元インテル社員の批判メール訴訟、州最高裁が「メール送信禁止命令は無効」と裁定WIRED

 同僚に電子メールを送ることは、たとえそのメールの内容が会社に対して批判的であっても、侵害行為とは見なされないという裁定が、カリフォルニア州最高裁判所で6月30日(米国時間)に下された。

 米インテル社に対して不満を抱く元社員、クルーシュ・ケニス・ハミディ氏が元同僚に電子メールを送ることを禁じた州地方裁判所と高等裁判所の判断に対し、カリフォルニア州最高裁判所はこの判断を覆すことを4対3で支持した。言論の自由の擁護派は今回の裁定を称賛している。

 「州最高裁判所は、コミュニケーションが訴訟の争点であることを理解していた。違う裁定が下されていたら、あらゆる個人があらゆる個人と結ばれるというインターネットの基本構造が危うくなっていただろう。そうなれば、インターネットは分断されてしまうだろう」と語るのは、 http://www.eff.org/ 電子フロンティア財団(EFF)のリー・ティエン氏。EFFはハミディ氏のために、法廷助言者の摘要書を裁判所に提出している。

 1996年に解雇されたハミディ氏は、1990年代後半にインテル社の社員3万人にそれぞれ6通の電子メールを送った。メールの内容は、同社の労働慣行を批判し、社員に http://www.faceintel.com/ 反インテル団体への参加を求め、転職を促すものだった。

 インテル社は、ハミディ氏が送った電子メールは職場を混乱させており、ネットワークの侵害にあたると主張し、キャンペーンを中止させる裁判所命令を求めた。

 カリフォルニア州の州地方裁判所は1998年にインテル社の主張を認め、ハミディ氏に電子メールの送信を止めるよう命じた。ハミディ氏は上訴したが、州高等裁判所は2001年、ハミディ氏の行為はインテル社のサーバーへの侵害にあたるという判断を支持した。

 これらの下級裁判所がハミディ氏に対する禁止命令を支持する根拠となったのは、「私有財産の侵害」として知られるコモンローの規定だ。この規定は、財産の所有者が、その財産を悪用するだけで盗んではいない者を訴えることを認めるもの。

 カリフォルニア州高等裁判所は、第三者の財産への干渉は禁止命令を出すのに十分な行為と見なす判断を支持した。

 州最高裁判所は、ハミディ氏の電子メールはインテル社のサーバーを実際に混乱させたわけではないので侵害にはあたらないとして、高等裁判所の判断を退けた。州最高裁判所は過半数の意見として、「ハミディ氏は、社員と通信するという本来の目的のために電子メール・システムを利用したにすぎない」と述べた。

 最高裁はまた、次のように述べている。「システムは当初の目的どおりの役目を果たし、物理的または機能的な障害や混乱を招くことなくメッセージを伝送した。このような時折の送信を、インテル社のコンピューター・システムの質や価値に損害を与えると合理的に見なすことは不可能だ」

 ハミディ氏の弁護団と支持者は、下級裁判所の判断がそのまま認められれば、ウェブページへのハイパーリンクを実行したり、受信者が求めていない電子メールを1通送信したりするだけでも訴えられかねない事態になる、と懸念していた。

 「裁判所は、インターネットのネットワークとしての機能を損なうおそれのある新しいルールを作ろうという誘いをきっぱり断った。原告が私有財産を侵害されたと主張したければ、通信機器が損害を受けた証拠が必要だ」と、ハミディ氏の弁護士の1人、グレゴリー・ラストウカ氏は語る。

 インテル社は、言論の自由ではなく私有財産が争点だと主張していた。

 「われわれは裁定に失望している。だが、ハミディ氏がインテル社へのスパム送信を再開した場合にどんな手を打てるか判断するために、今回の裁定を検討している」とインテル社は述べた。上訴するかどうかは未定だという。

 裁定は言葉を選んだ文面になっており、サーバーを過負荷にしたスパム発信者に対し、企業が訴訟が起こせなくなるわけではない。

 「ハミディ氏が時折送信してくるメッセージを受信してインテル社が被るコンピューターの機能的負荷や、個々の受信者の時間的損失は、増える一方の宣伝メールの洪水によってインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)やその顧客が被る負担や出費とは比較にならない」とカリフォルニア州最高裁は述べている。

 州最高裁判所はまた、インテル社が、電子メールによって職場が混乱し、生産性が落ちたと主張してハミディ氏の行動を阻止することはできないし、「社員の時間という面で財産の権利を主張する」こともできないと述べた。

 だが、[宗教・言論・集会・請願などの自由に干渉することを禁ずる]合衆国憲法修正第1条によって、インテル社はハミディ氏の電子メールを社員が受信するのを妨げてはならない、という判断は示さなかった。

 ハミディ氏が初めて大量の電子メールを送信した後、インテル社のエンジニアは、内容とIPアドレスに基づいてハミディ氏のメールをブロックするフィルターを付け加えた。だが、ハミディ氏は、別のコンピューターを使ったり、メール中の単語にスクランブルをかける手法でキーワード式のフィルターを避けたりして、フィルターの一部を巧みにかいくぐっていた。

[日本語版:矢倉美登里/高森郁哉]日本語版関連記事

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