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2003年07月02日(水) 00時00分

自損事故か相手過失か/接触なし電柱に衝突男性が起訴された交通事故の現場を調べる弁護人ら=札幌市南区簾舞で朝日新聞・



刑事裁判 あす判決


検 察 側 脇道からの車原因

被告弁護側 目撃証言あいまい


  自損事故なのか、相手の過失による交通事故なのか──。速度を出しすぎた乗用車が電柱に激突し、女性運転者が重傷を負った。一見、単独事故のように見えるが、検察側は直前に脇道から出ようとした車を避けたのが原因として、その男性運転手を起訴した。これに対し被告・弁護側は目撃証言はあいまいとして一貫して冤罪を主張している。接触のない交通事故が刑事裁判になるのは珍しく、3日の札幌地裁の判決が注目されている。
(原 裕司)



  事故は00年6月3日午前6時ごろ、札幌市南区簾舞の国道230号で起きた。現場は制限速度60キロの片道2車線の直線。時速90キロで定山渓方面に走っていた女性会社員(当時20)の乗用車が道路左側の電柱に激突し、炎上。右足骨折と全身の半分以上をやけどする重傷を負った。

  札幌南署は女性の話と目撃証言などから、事故現場から60メートル手前の交差点付近で国道に出ようとした車があることを重視。衝突を避けようと女性が走行車線から追い越し車線に移り、ハンドル操作を誤って電柱に激突したと結論づけた。同署は事故の2日後、脇道から出てきた車と運転者を特定し、事情を聴いた。

  近くに住むこの男性(当時64)は現場を通ったことは認めたが、女性の車を見ておらず、近づいてくる車などなかったと話す。事故すら知らなかったという。

  事故から2年後の昨年3月。男性宅に起訴状が届いた。在宅起訴だった。しかも当初、同署の捜査にあった「道路交通法違反被疑事件」の文字はなくなり、問われたのは業務上過失傷害罪だけになっていた。起訴状は「右方道路から進行してくる車両の有無及びその安全確認不十分のまま、漫然と時速5キロメートルで交差点内に進入した過失」とされた。

  だが、計14回の公判で男性を加害者として特定するために出されたのは目撃証言だけだった。女性会社員の車の後ろを走っていて、男性の車を目撃したという夫婦はナンバーをメモしたとされるが、そのメモが公判に提出されなかった。現場検証での目撃者の供述と法廷での証言の食い違いも浮き彫りになった。

  さらにはナンバーの数字が同じ車は三十数台もあるとする証言も捜査員から出て、弁護側は捜査対象者を絞りきっていなかったと主張する。男性が交差点を通ったと証言する時刻と事故の発生時刻にも10分ほどの開きがある。

  女性会社員は意見陳述書を出し、ケロイドになったやけどの治療で何度も手術を繰り返し「この辛さは味わった人間にしかわからないと思います」と述べ、男性の厳重な処罰を求めた。検察側は禁固1年8カ月を求刑し、裁判は結審した。

  被告の男性は「事故も知らないし、そんな車が近づいたという記憶もない」と因果関係を否定する。「本来なら単独事故として処理されるようなケース。あいまいな目撃情報だけで起訴した。時速90キロも出していなかったら事故にもならなかった。起訴は、被害者救済を求める声の大きさも影響したのではないか」と弁護人は指摘している。(7/2)

http://mytown.asahi.com/hokkaido/news01.asp?kiji=5153