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2003年07月02日(水) 00時00分

“身内優遇”行員向け低利融資 『自行員に貸す金あったら、貸しはがし企業にこそ』  東京新聞

 ■中小企業恨み節『そんな制度ない』

 経営が悪く公的資金に頼る大手銀行が給与やボーナスをカットする。これは当たり前の話だ。ところが一部大手銀行が、賃下げショックを和らげるため、行員向け低利融資制度を設け始めた。高収入に慣れ親しんだ行員たちの生活防衛が目的だ。やはり一度上げた生活水準は、下げられないのか。

 まず利息が1%台の低利融資制度を緊急に整備した、みずほフィナンシャルグループ(FG)行員の感想だ。「制度をつくるのは良いが、その前に、どうなんだと思いますよ。人件費削る前に、(経営陣は)ほかにやれることもあるんじゃないか、と。仕事がきつい割には、言われるほどには、今は給与が高いわけでもないし」

 ■みずほ『社員の互助制批判されても』

 三十代前半というこの行員の場合、基本給は約一割減で、ボーナスは一−二割削減だ。「今年はボーナスから年金を多く引かれるから、実質二、三割の削減だ」と嘆く。ただ、融資制度については「去年の十二月に、基本給やボーナスが削減される代わりに、こういうの(低利融資制度)をつくるという説明があった。でも、われわれの世代は、実際、ほとんど制度を利用していない。給与などが減って、足りない分は、預貯金を崩している。制度がありがたいのは、三十代後半から四十代くらいの子供に学費がかかったり、住宅ローン負担が大きい人たち。生活設計が狂ってしまいますからね」と話す。

 みずほ同様、低利融資制度を導入したりそなグループの四十代の行員が本音をもらす。

 ■『生活レベル落とせない』

 「住宅ローンにつきる。まだ十数年残っている。ボーナスがあてにできなくなり、ローン返済が滞りそうだ。家族の顔をみれば、家は手放せない。会社は『生活のレベルを下げてくれ』というが、簡単にはできない」

 当の銀行側は、身内への“優遇制度”をどう説明するのか。

 公的資金の再投入問題で揺れたりそなホールディングス(HD)は年収減に対応するため、従来の住宅資金向けの社内融資とは別に「生活支援融資制度」を始めた。

 りそなHDの広報担当者は「ご存じの通り、急なこと(公的資金投入)で、(社員に対する)激変緩和措置だ」と説明する。融資上限は百万円で、最長五年間の分割返済が可能だが、「金利や利用状況については公表していない」。一般の融資との条件比較や審査基準についても「社内融資制度ですから…、比べられるものではない…」と言葉を濁す。

 みずほFGの広報担当は「グループ内の社員が互いに出資しあう共済会、互助会的な制度の中で行っている。真剣にリストラを進める中で、賃下げに伴う生活への影響の大きさを考えた緊急避難的な生活支援の融資だ」という。さらに同FGの関係者は「互助会で行う融資を批判されても…」と弱々しく反論した。

 最高七十万円の融資制度を設けている三井住友銀行は、ボーナス減とは関係ないとした上で「従業員の資金繰りなどを支援する制度だ」と言葉少なだ。

 賃下げの中、銀行員たちは自分たちの生活を守るのに必死のようだ。こんな姿は中小企業関係者にどう映るのか。

 「うちにはそんな社員への融資制度なんてない。銀行には憤りを感じる」。都内の配管機材専門商社の役員が怒る。

 「この夏のボーナスは数年前の七割減だ。ローンの支払いなどで金が必要なら、社が積み立てている退職金を前借りするしかない。だがこれは緊急避難的な手で、借りるにも限度がある。車を売ったり、住宅を手放さざるを得ない人もいると聞く」

 だが大手銀行に対しては「結局、何を言ってもどうにかなるもんじゃなし。乗り込んでいくわけにもいかず、酒のさかなにするのが関の山だ」とあきらめムードだ。

 石油関連企業の経営者は「銀行員は特権意識の塊だ」と批判する。

 「こちらが新規に融資を受けようとすると、これまで2%だった金利を上げてくる。自分の努力で収益を上げるなら分かるが、金利の値上げとして顧客に押しつけてくる。これだけ痛い目に遭っているのに、特権意識から、自ら努力をする姿勢がない」とあきれる。

 やはり銀行と直接かかわりが深い中小企業関係者には、生活防衛の制度でも“特権”に見えるようだ。

 一方、ソフィアバンク・ディレクターの藤沢久美氏は「一般行員がちょっとかわいそう」と違った見方をとる。「多くの行員は自分の銀行から低利融資を受けていて、高収入、低金利生活に慣れている。だから甘い計画でローンを組んでいて、今回のボーナスゼロはショックだったようだ。自行で借りると借り換えもできないし、会社も辞められない。むしろ経営陣が責任を取るべきで、これまで高収入から得た中から融資の原資を出すなどすべきだ」と主張する。

 評論家の佐高信氏は「一日は『銀行の日』? (だめ銀行がなくなる)『減行の日』かと思った」と皮肉りながら続ける。

 「自行員に貸す金があるなら、貸しはがしで苦労している企業に貸し付けるべきだ。『あなたの常識、社会の非常識』だったか、そんな川柳があったが、彼らから言わせればそれなりに努力してきたと思っているだろうが、一般から見るとまったくやってない。未だに経営陣の報酬や退職金を公表しないのは、信じられない」と手厳しい。

 ■甘え、おごり 国民にツケ

 評論家の室伏哲郎氏も「自分たちを特権階級と思っているが、税金で生かされているいわば、お恵みを受けている身を自覚すべきだ。だがもっと問題なのは銀行を助ける政策を取る自民党政権だ。五十年その政権を変えないで、その中からこうした問題が出てきた。不満なら政権交代をさせるべきだ。甘えとおごりの構造を国民がつくってしまった」と話す。

 経済評論家の三原淳雄氏は「情けない事態だ。今の銀行は、優秀な人材を大リーグに取られた日本のプロ野球と同じ。高給を取る資格があるプロの行員は外資に行き、資格のない行員に高給を払い続けてきた。だからまわりから怨嗟(えんさ)の声が出る」とした上で批判の矛先を別の方向に向ける。

 「一体、こんな情けない銀行にしたのはだれか。過保護行政を続けた揚げ句、土地の総量規制で銀行が身動き取れないようにしたのはだれか。今なお日本の資本主義経済のど真ん中に居座っている、旧大蔵省幹部たちの責任を追及せずに、事態は何も解決しない」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030702/mng_____tokuho__000.shtml