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2003年06月29日(日) 16時24分

弱みにつけ込む卑劣な話術 オレオレ詐欺の被害女性語る朝日新聞

 ある日突然、「オレだよ、オレ。金を持ってきて」という電話がかかってきたら──。お年寄りなどが被害に遭う「オレオレ詐欺」事件が、首都圏で続発している。なぜ、自分の息子や孫の声だと思いこまされてしまうのか。犯人らは、人間心理の弱みにつけ込む卑劣な「テクニック」を持っていた。

 昨年冬、被害に遭った東京都台東区の主婦(55)の場合はこうだった。

 昨年11月14日昼過ぎ。体調を崩した夫(59)と朝から病院に行き、帰ってきた直後で、気落ちしていた。そこに自宅の電話が鳴った。聞き取れないほど小さな声だった。

 「オレオレ。オレだけどさ」

 次男(29)の言い方に似ていた。名前を出して聞き返すと、思わぬ答えが返ってきた。

 「大変なことになっちゃった。やくざに捕まってお金を持ってこないと殺されちゃう」

 血の気が引き、足が震えた。「どうして」。聞き返しても、小さな声で「隣にやくざがいる。今は言えない」。声も出せないほど脅されていると思った。横浜市の会社で働く次男とは同居しており、この日も自宅から送り出していたが、本人だと思いこんだ。

 要求額は800万円。神奈川県の川崎駅近くに1人で来るよう指定された。偶然、親族から預かった850万円がタンスの中にあった。

 暗い部屋に監禁され、縛られて暴行を受ける次男の姿が浮かんだ。夫は警察に届けるべきだと主張したが、「殺されちゃう」と言うと、「金で済むなら」と同意した。

 電話は5、6分。その間、「やくざに取られたから、自分の携帯には絶対に電話しないで」と何度もくぎをさされた。

 目印が必要と言われ、赤いシクラメンの鉢植えを持っていった。電車で川崎駅に着き、指定された番号に電話した。「1人じゃないだろ」。同行した夫が近くにいるのを見破られたと思い、夫に離れて待つよう頼んだ。

 電話で誘導され、京急蒲田駅へ。指示通りに踏切を渡って歩くと、背後から男が現れた。「おれについてこい」。黄色いジャンパーに黒いズボン姿。人気のない路地で、男は「金を持ってきたか」と切り出した。

 「息子が何かしたんですか」と聞くと、「そんなこと息子に聞け」と言い返された。「息子は30分後に帰す。駅で待て」。金の入った紙袋を渡すと男はにやりと笑い、歩いて立ち去った。全身の力が抜けた。

 夫と待ったが、次男は現れない。こらえきれずに携帯に電話すると、次男は「何のこと?」。目の前が真っ暗になった。

 主婦は事件を振り返ってこう話す。「ほかの人の被害をニュースで見たら、『ばかだなあ、確認すればいいのに』と思ったはず。でも、いざ自分がそうなると動転して、子どもを助けたい一心になってしまった」

     ◇            ◇

 手当たり次第電話をし、子どもや孫だと思いこませて金をだまし取る「オレオレ詐欺」。警視庁が把握している被害は今年1月以降、約200件、約1億5000万円にのぼる。数年前から目立ち始め、模倣犯も多いとみられる。

 台東区の主婦の事件で逮捕された東京都大島町の建設会社役員、足立義久被告(48)は、テレビのワイドショーで手口を知り、3年前から犯行を繰り返していたという。「サダ子」や「ツネ」といった高齢女性に多い名を電話帳で探し、1日150件ほど電話した。被害は19人5360万円にのぼる。手にした金は、赤字続きの会社の資金繰りに充てていた。

 最近では組織的犯行が増えた。警視庁は5月下旬以降、二つのグループを摘発し、組織の解明を進めている。これまでの逮捕者は19〜22歳の男13人と30歳代の男2人の計15人。両グループがだまし取った総額は約9000万円以上とされる。

 グループの一つは、法外な高利で貸し付ける「ヤミ金融」の元店長(21)がリーダー格。「もうからなくなった」と今春転身した。ヤミ金融の元部下や友人らを組織し、電話をかける役、金を引き出す役などを分担。プリペイド式の携帯電話と約40の架空名義の銀行口座を使っていた。

 もう一つは、無職の男(20)を中心とする中学・高校時代からの遊び仲間グループ。5月ごろから杉並区内のマンションを拠点にしていた。

 両グループの摘発後、被害はいったん収まったが、6月に入って、「女性を妊娠させた」「会社の借金が返せない」など新たな「シナリオ」を使った被害も起きている。(06/29 11:55)

http://www.asahi.com/national/update/0629/007.html

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