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2003年06月27日(金) 17時31分

有料Wi-Fi接続サービスに未来はあるかWIRED

 南太平洋の島国ニウエは、一見したところ、世界最大手の技術会社にとって強敵であるようには思えない。観光客向けのウェブサイトによれば、この島は面積259平方キロ、人口は2000人以下で、国民は550万ドルの年間予算で生活している。[日本政府はまだ国として承認していない。]

 だが、米国の非営利団体 http://www.niue.nu/ インターネット・ユーザーズ・ソサエティ・ニウエ(IUSN)はこの国で、一部のワイヤレス企業が少々神経を尖らせかねない偉業を成し遂げた。無料で『Wi-Fi』(ワイファイ)インターネット接続サービスを全国民に提供したのだ。

 IUSNは、サービスを利用するのに必要なコンピューターや無線LAN用のPCカードは配布していないが、包括的なネットワーク——ココナッツの木の上に設けられた太陽電池式の中継局など——を敷設し、島民全員と観光客に無料でWi-Fiインターネット接続環境を提供している。IUSNの代表を務めるビル・セミッチ氏によれば、コンピューターを所有している島民は約300人だという。

 「ニウエはごく小さな国で、全国民をワイヤレス化するにはうってつけの場所だ」とセミッチ氏は語る。

 だが、セミッチ氏のプロジェクトは、米AT&T社や米IBM社、米インテル社、米TモバイルUSA社などの企業にとっては脅威になるかもしれない。これらの企業は、コーヒーショップやホテル、空港など人が集まる場所に有料のWi-Fiサービスを提供して利益を上げようとしている。

 Wi-Fiインターネット接続を利用できる場所は爆発的に増えている——市場調査会社の米IDC社によれば、現在Wi-Fiの「ホットスポット」は世界に2万ヵ所で、今後さらに急増して2007年には19万ヵ所に達する見込み——とはいえ、有料サービスが利用されている証拠はほとんどない。Wi-Fiユーザーの数は現在68万7000人で、2007年には2500万人と飛躍的な伸びが予測されているが、IDC社のアナリストは、有料サービスの利用者数と無料サービスを探し求めるユーザーの数を区別していない。

 IUSNなどの団体が無料ホットスポットを設けている一方で、有料のホットスポットが苦しんでいることを示す事例証拠はたくさんある。

 たとえば、スターバックスのコーヒーショップを利用する客は毎週2200万人にのぼるが、大いに宣伝されている有料のWi-Fiネットワークを利用しているのは、そのうちの「数万人」だという。昨年8月以来、北米のスターバックスのうち2100店舗(60%)がWi-Fiネットワークを導入している。

 米フォレスターリサーチ社のアナリスト、ラルス・ゴデル氏は、最近ヨーロッパでWi-Fi導入が停滞しているため、公共の有料ワイヤレス・ネットワークの敷設に注がれた費用は「無駄」になっていると話す。ヨーロッパでは、ネットワークに接続するのに必要なノートパソコンやPCカードの所有者が十分な数に達しないだろうというのだ。

 ゴデル氏はまた、ヨーロッパではモバイル・インターネット接続に喜んで金を払うユーザーは限られているため、サービスに必要な広帯域ネットワークの新設費用をサービスプロバイダーが回収するのは困難と予測する。

 「単純に、使用される機器の数と、外出先でのインターネット接続に大金を払おうというユーザーの意欲には基本的な制約があるので、公共(無線LAN)のユーザー数は、当初想定されていたネットワークのキャパシティーをかなり下回る。それだけでなく、ホットスポットからインターネットへのバックホール接続を提供するには膨大な費用がかかるので、多くのホットスポット・ビジネスは消滅するだろう」とゴデル氏。

 もちろん、Wi-Fiの支持者たちは、無料Wi-Fiサービスが有料サービスの死を意味するという意見に否定的だ。無料Wi-Fiサービスは、ニウエだけでなく、ニューヨークやサンフランシスコ、シアトル、ミルウォーキーなど一部の米国都市でも提供されている。少ないながらも一定の層は必ず、無料ホットスポットが提供する大部分の接続サービスより安全で高速な有料接続に関心を抱くと、『 http://www.wifialliance.org/ Wi-Fiアライアンス』のマネージング・ディレクターを務めるフランク・ハンズリク氏は指摘する。

 「無料サービスの支持者はある程度いるだろう……『スループットは遅いだろうが。だがなんといっても無料だ。無料にまさるものはない』と言うような。だが、有料サービスの価値がわかる人々も存在するはずだ」とハンズリク氏。

 ハンズリク氏はゴデル氏のコメントについて、Wi-Fi技術はヨーロッパではまだ新しいと指摘する。そのため、米国ほど普及しておらず料金も高いというのだ。

 「今のところ、ヨーロッパの有料サービスの料金は米国よりもかなり高い。1日の利用で米国なら10ドルほどで済むのに、ヨーロッパでは30ユーロ(34ドル)もかかる。ヨーロッパのWi-Fi市場はまだ揺籃期にある」とハンズリク氏。

 実際、大半のWi-Fiサービス・プロバイダーはまだビジネスモデルを試しているところだと、アナリストたちは述べている。Tモバイル社は、スターバックス社にWi-Fiサービスを提供しているが、導入以降、料金を大幅に下げている。米ベライゾン・コミュニケーションズ社は、自社のデジタル加入者線(DSL)を利用する顧客に無料の公共Wi-Fi接続を提供しはじめた。

 「ベライゾン社は、Wi-Fi接続の無料提供によって自社のDSLサービスを差別化している——ケーブル会社やそのケーブルモデム・サービスに対抗しているのだ。競争力の観点から、有料ブロードバンド・サービスを利用する一般顧客向けのWi-Fiアクセスは、パッケージの一部としてバンドルされるようになる」と、フォレスターリサーチ社のアナリスト、チャールズ・ゴルビン氏は見ている。

 セミッチ氏は、音楽ファンが『ナップスター』を利用して音楽ファイルの交換をしたように、DSLの加入者がネット接続をワイヤレスで隣人と共有するのを防ぐ手立てはないと語る。IUSNは、 http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030312107.html ドメイン名『.nu』を売って資金を調達しており(日本語版記事)、年に50万ドル払って地域通信事業者からブロードバンドの帯域幅を借り、ニウエ島全域に無線インターネット接続を無料で提供している。

 「(有料Wi-Fiサービス業者)は、このような、利用者が多い接続に目を付けるだろう。集合住宅では大勢がインターネット接続を共有するようになる。しかも、彼らはブロードバンド接続サービスを提供する企業の許可を得ずに行なうだろうからだ」

 「インターネット・プロバイダーが心配しなくてはならない問題だ」とセミッチ氏は語った。

[日本語版:矢倉美登里/高森郁哉]日本語版関連記事

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030522105.html 海辺の小さな町に広がる『Wi-Fi』ホットスポット

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030519106.html パリの街を1つの巨大な「ホットスポット」に

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030407103.html 「ホットスポット」の需要は期待したほど多くない?

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030313101.html 無料の無線LAN接続を提供し、宣伝に利用する企業が登場

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030313102.html 伸び悩み? 米国の無線LANアクセスポイント

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030312107.html 世界最小の島国、ドメインを売って全市民に無料ブロードバンド

http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20030220303.html ワイヤレス・ブロードバンドを急拡大? 『メッシュボックス』

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20021111102.html ニューヨーク市民全員のワイヤレス接続は実現するか

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20020823107.html 「スターバックスの大規模ワイヤレス接続サービス」に疑問の声


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