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2003年06月27日(金) 22時37分

6月28日付・読売社説(2)読売新聞

 [尼崎公害対策]「国に誠実な対応を迫るあっせん」

 公害裁判上の和解をした当事者同士が再び争うという、前例のない事態に終止符が打たれるか。「尼崎公害訴訟」で国の公害等調整委員会(公調委)のあっせんが成立した。

 自動車による大気汚染に苦しむ兵庫県尼崎市の住民が、道路管理者の国と阪神高速道路公団に対し、和解条項を守るよう求めていたものだ。

 二〇〇〇年末に大阪高裁で和解が成立して以降の経緯を見れば、国などの対応は、和解の精神を忘れ、被害者を無視した、通り一遍のものだった。縦割り行政の弊害も目についた。

 今度こそ国は、あっせん内容を誠実に履行し、環境汚染の改善に向けて実効ある対策を取らねばならない。

 自動車排ガスを削減するために、大型車の交通規制などを盛り込んだ和解条項の文言はかなり抽象的で、玉虫色と批判されても仕方ない面があった。

 そのせいか、国の和解後の取り組みには、積極的な姿勢が見られなかった。

 国土交通省は、国道43号線や阪神高速道路の交通量調査を行っただけで、大型車規制ができるかどうかの判断を兵庫県警に委ねた。県警から、周辺道路に影響を及ぼすため規制は困難、との回答があると、それを住民側に伝えただけだ。

 どんな規制策を検討したのか。なぜ実施が困難なのか。具体的説明がなく、住民側が納得できないのは当然だ。

 今回の公調委のあっせんは、大型車規制を進めるべきことを明確に示し、交通の実態調査や取るべき規制策について具体的な見解を打ち出した。

 国が、従来のような対応に終始することは、今度は許されない。法律上、交通規制が兵庫県警の所管であるとしても、それを理由に、取り組みが消極的になることなどあってはならない。

 大気汚染と健康被害との因果関係についての司法判断は、これまでの訴訟ですでに定着しており、尼崎、名古屋南部訴訟では、一定濃度を超えた汚染物質の排出差し止めを命じる判決も出ている。

 にもかかわらず、尼崎のほかにも、大阪・西淀川、川崎、名古屋南部と各地の訴訟が和解で決着した後、交通規制などで十分な成果が上げられないのは、どうしたことか。行政側に真摯(しんし)な姿勢が見られないのであれば、今回のような公調委での手続きが参考になろう。

 十月から首都圏の一都三県で粒子状物質の削減を義務付けたディーゼル車規制が始まり、基準を満たさないトラックやバスは運行できなくなる。量的規制だけでなく、広域的な対策も含め、道路行政の転換が求められている。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20030627ig91.htm

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